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いつの日か花咲かん(1947)引揚者

製作=大映(東京撮影所) 公開:1947.12.16 82分 白黒
企画:市川久夫 監督:牛原虚彦 脚本:棚田吾郎 原案:高木俊朗
出演:小林桂樹(小田切一雄)、春木隆(村田修)、三條美紀(村田早苗)、渥美進(森野鉄夫)、宮崎準之助(山形真二)

混乱と虐偽と汚濁に満ちた敗都東京の表玄関品川駅に、今日もまた数多の悲劇を生み出すべく引揚援護者達を乗せて列車がすべり込んだ。引揚者援護学生同盟の小田切、村田、森野、山形、駒木や白鳥セツ子、泉愛子等はそれぞれの役目で引揚者達の労をねぎらうのだった。彼等自身がその父母兄弟の帰りを待つ身の上だったのだ。小田切、村田、山形は父母を、白鳥セツ子は兄を、だが今日も空しかった。終戦後の余りにも冷酷なこの世に、品川の高輪寮でお互いが励し合いながら学業の傍らというより、学校に出る日さえ少く、列車が到着する毎の出迎えに寧日なき有様だった。学校にも行かずこんなことをしてていいのだろうか。総てが空々しく思えるではないか。駒木は懐疑的な気持から同盟を脱退し去った。山形の父が帰って来る。喜びと共に、新たな苦悩をもたらして。白鳥の兄も帰って来た。待ちに待った小田切の父親も。しかしそれは遺骨であった。村田の父親も帰って来た。村田の妹早苗は同じ引揚者のための常盤寮で保母として、かいがいしく働いていたが、かねて小田切に好意を寄せていた。喜びと悲しみの交錯する中で、村田は無理がたたりついに倒れた。病は篤く命はたん夕に迫った。その頃脱退した駒木はあくまで社会正義のために戦うのが本当だと覚り帰って来た。村田は臨終の床で同志達に囲まれながら小田切の手を握り、「最後までやってくれ、それから早苗を頼む」と言って息を引き取ったのである。

→「一九四〇年代日本映画の新潮流」 / 加藤幹郎著(所収:映画史を読み直す(日本映画は生きている第2巻) 黒沢清岩波書店 2010)につまらぬ映画評あり