zames_makiのブログ

はてなダイアリーより移行

殴り込み艦隊(1960)東映の娯楽的戦争映画

製作=東映(東京撮影所) 公開:1960.10.30 2,453m 白黒 東映スコープ
企画:岡田寿之 加藤秀雄 吉田達 監督:島津昇一 脚本:北村勉 原作:萱沼洋(→DBの菅沼洋は入力ミス)「駆逐艦黒雲一家」/ 萱沼洋 穂高書房 1958 )
協力:海上自衛隊(クレジットなし、明らかに多くの場面で自衛艦を撮影に使用している)
出演:
高倉健(石山中尉:新任機関長)真面目で女の気のない若者。
田崎潤(剛田艦長)豪胆で信頼のおける指揮官、連合艦隊の無謀な作戦に反対
花澤徳衛(寺田機関長)交代で内地に帰る艦に転任となる
中山昭二水雷長)豪胆な先任士官
直木明(南兵曹)負傷しながら火のついた弾薬を廃棄し、損傷した艦を救う英雄的行動で戦死する。
殿山泰司(軍医長)
水木襄(和田二水)従兵、すぐに戦死する
久保菜穂子(タカ:ラバウルの店の女)恋人、
清川虹子(志津:呉の料亭の主人)参謀を批判する
駆逐艦「黒雲」乗員の海軍生活と戦闘を描く戦争映画。悲惨又は実録的な反戦映画ではなく、軍艦内での兵士の様子と戦闘描写(戦争アクション描写)を見せるのが主眼。戦争の意味・意義にはほとんどふれない、強調されるのは戦艦に頼る時代遅れの方針や、自ら全滅を必至の作戦を立てる海軍司令部への批判であり、これらは東映ヤクザ映画風の反体制的雰囲気をかもし出すが戦争反対ではない。映画は限定した場面しか描かず作戦や戦局を理解させる描写はない、ただ「黒雲」乗員の陽気で前向きな気質や主人公の成長などが描かれるだけ。描写場面を局面に限ることで、社会から要請される戦争反対や反省のメッセージ表出と陰気な筋立てを避けて、アクションや男気などを描写する映画として成立させている。舞台は昭和17年ラバウルから昭和20年の沖縄沖作戦(菊水作戦)までで、駆逐艦雪風」など実在の艦のたどった史実に基づいていると思われる。ラフな会話が交わされるが規律がゆるいだけでヤクザ風味を出した「いれずみ突撃隊」(高倉健主演)などの擬似ヤクザ映画ではない。タイトルの原作クレジットは正しく萱沼洋。


(エピソード)
・新任機関長の赴任と豪胆な艦の気風・金太郎レース:昭和17年高倉健の新任機関長がラバウルに停泊している駆逐艦「黒雲」に赴任。戦艦大和は時代遅れ、我々前戦部隊が本当の戦闘をしている、との本音を聞く。豪胆で愉快な罰則の金太郎レース。
・敵飛行機との戦闘と従兵の死:敵攻撃機との厳しい戦闘、驚く主人公。艦長から豪胆さの基礎を教わる。
・潜水艦との戦闘と成長:機関長となった主人公は艦長の教えに従い冷静さを失わず間一髪で魚雷をかわす。
ラバウルの飲み屋街の描写と女とのロマンス:ラバウルの飲み屋で乱痴気騒ぎをする兵、やがて海軍同士で喧嘩に。そこに敵戦闘機の空襲。主人公は料亭の女から慕われる。
・機関長の交代:古株の機関長に内地帰還のチャンスをゆずり「黒雲」になじむ主人公。
・レイテ沖おとり作戦への参加:ナレーションで戦況更に悪化、不利なおとり作戦で機関長となった主人公は奮闘、夜間の砲戦が描かれる。艦に損害・浸水するが南兵曹の必死の行動で艦は救われる。主人公は安穏としている司令部を批判すし反戦的に聞こえるがよく聞けば反戦ではない。
・内地料亭での参謀とのいさかい:一端内地に帰った「黒雲」。主人公は士官用の料亭で兵のための宴会を開くが、お堅い参謀からとがめられ、正々堂々と反抗し逮捕される。いよいよ戦況不利で連合艦隊司令は全滅必死の沖縄突入作戦を司令するが剛田艦長は正面からこれに反対し、艦長を下ろされる。
・剛田艦長の再生と艦の再生:昭和20年の最後の作戦、乗り換えた剛田艦長の船は沈没し負傷し海面を漂流する。「黒雲」がそれを拾う。「黒雲」にも戦闘で退艦命令が出るが、剛田艦長の死の淵からの回復に勇気付けられ主人公らの掛け声で持ち直す。しかしまた戦闘に赴くのだった。