zames_makiのブログ

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オヴァランダース(1946)戦争プロパガンダ

=オーストラリア政府製作による遅れてきた戦争プロパガンダ
THE OVERLANDERS 映画 91分 オーストラリア/イギリス
日本初公開年月 1948/10/ (BCFC=NCC)=キネマ旬報ベストテン外国映画9位
アメリカ、イギリスでDVD発売、$23.98
監督・脚本:ハリー・ワット(英) 製作:マイケル・バルコン
出演: チップス・ラファティ(Dan McAlpine)、ジョン・ニュージェント・ヘイウオード(Bill Parsons)、ダフニ・キャムベル(Mary Parsons)、ジーン・ブルー(Mrs. Parsons)、ヘレン・グリーヴ (Helen Parsons)
=オーストラリア政府による戦争プロパガンダ映画、日本軍の脅威に備えて牛を移動させる。
…オーストラリアの抗日戦の裏面史を綴った作品。1943年、北部の空襲も激しくなり、ある精肉会社にも閉鎖の命が下ったが、主任のダンは、昔、軍に志願したとき、係官に言われた“牛は弾より貴重”をモットーに、千頭の牛を僅かの仲間と安全な南部に運ぼうと出発。すぐに、家を焼き払って逃げる途中の牧場主一家と合流し、ロンドン-モスクワ間と等距離というキャトル・ドライヴが始まる。それは迫力に充ちており、仲間割れでその分の馬がいなくなると、野性馬を捕獲し調教しようとする。猛暑の中せっかく辿り着いた水場が沼地で、牛をいっぺんに寄せつけないよう気を配っている所、一陣の風に水の匂いを嗅ぎつけた牛どもが暴走する場面はすごい迫力。クロコダイルのいる川を渡るシーンではよく撮れている。白眉は、水がいよいよ涸れたとみての近道の峠越えで、断崖絶壁をそろりそろり、牛を歩かせるスリル、八ヶ月をかけ、53頭の損失だけで無事目的地に到着した一行は一躍、国民的英雄となり、再び北上する飛行機に乗る。後へ続け--と多数の牛追いの風景が眼下にみえるのである。(オールシネマ解説)
シンガポールが陥落して以来、一九四三年、オーストラリア北辺はしきりに空襲を受け、人心は動揺していた。人口き薄なオーストラリアでも、北部地方はとりわけ人口乏しく、白人の数はきんきん五千であるから、もし上陸作戦が始まれば、ほとんど無力に等しい。しかし、世界第一の食糧貯蔵庫といわれるだけに、家畜は五十万頭を越すという豊富さである。北部地方の小村落で、牛肉積出しの小港ウインダムにある、オーストラリア牛肉輸出会の加工場は閉鎖されることとなった。ここに働いているダン・マッカルパインは、牧畜が家業であった。会社は敵の食糧とするよりは、家畜を全部射殺する意向であったが、ダンはそれよりもこの家畜群を難ぷに運ぶべきだと考え、自らその輸送の第一陣を承ることとなった。ダンは一千頭の牛を追って、ウインダムから大陸を斜めに横断し、クインスランドのブリスベーン近くの放牧場まで、一千五百マイルのばん地を突破する計画を立てた。所が彼の計画に賛成者はほとんどなく若者たちは軍隊志願が多かった。わずかに酒と賭博が好きのコオキイと、シンバッドと呼ばれる水夫と、ダンの腹心たる原住民ジャッキイとニッパーだけであった。意外にも自分の家を焼払った農夫ビル・パースンズは妻と二人の娘の一家をあげて、この壮挙に加わった。この少人数で五十頭の馬で一千の牛を追って、大陸を横断するのは、難事業であった。一日十五マイル進めば好調で、平均七、八マイル、どうかすると五マイルしか進まぬ日もあった。水の乏しい地域があった。鰐のいる川もあった。馬が毒草を食って倒れたこともあった。野馬を捕えて補充し、困難を征服して、一千五百マイルを八ヶ月かかり、目的のクインスランドに着いた。途中、シンバッドが腕と脚に重傷を負ったので、彼を診療所のある村へ運んだりしたこともあった。その間パースンズの長女メエリイとシンバッドは愛し合う仲となり、ブリスベーンで再会したのであった。家畜輸送に成功したダンはパースンズ一家と共に、ウインダムへ飛行機で帰り、更にこの困難な輸送任務につくこととなった。(キネマ旬報・物語)