zames_makiのブログ

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ハート・ロッカー(2008)アクション戦争映画

ハート・ロッカー(2008)THE HURT LOCKER
公開年月 2010/03/06 製作:2008年 131分 アメリカ 配給:ブロードメディア・スタジオ
監督:キャスリン・ビグロー 脚本:マーク・ボール
=感想:制作費1100万ドル興収1600万ドルで独立系で小品とされる。米国で批評家の受けは良いが興収は低くあまり売れていないので、米国人大衆の思考(指向)の反映とはいえない。イラク戦争をテーマとする映画は反戦厭戦的)映画(「勇者たちの戦場」「大いなる陰謀」「告発のとき」「リダクテッド」)も、この映画も売れていないと見るべきであり、アメリカの大衆は勝てなかった戦争はその内容に関わらずともかく嫌っていると受け取るべきだ。
 アメリカの批評家がほめるのはこの映画がイラク戦争を批判もせず称揚もしないその曖昧さにある。リアリズムの名目でスペクタクルと残酷さの両方を行く事で、戦争賛成・戦争反対の両論者に受けいれられるようにできている。日本でも同様で、反戦志向の東京新聞は「戦争を反省している」と誉め、タカ派産経新聞は「戦争を否定していない」と誉める。多くの映画評論家は戦争と戦争映画に詳しくないのでこの中間にあり、瑣末な技術論に拘泥して本質的な議論を避けている。
 しかし戦争を最もよく知るジャーナリスト土井敏邦は「戦争をただの娯楽にしてる、西部劇だ」と厳しく批判している。土井氏の説明を読めばリアリズムは実は嘘であり、アメリカにとって都合のよい部分だけが描かれているのがわかる。アメリカの戦争映画の歴史を見ればこうした曖昧な姿勢はベトナム戦争朝鮮戦争などに見えるもので、勝てなかった戦争の描き方だ。そして今までのアメリカ人の戦争認識を知れば結局それらの映画の受容のされ方は「アメリカの戦争は正しいはずだ」にあり、けして反省や反戦ではない。それを厭戦的として誉めるのか、認識足らずとして批判するかは、論者の戦争に対峙する立場によるだろう。
 結論として土井敏邦氏の評が正しい。日本人の視点で見るならこの映画は、数あるアメリカのアクション戦争映画の一つに過ぎない、その背景には戦争は正しい・当然だとの意識があるのは戦争映画の歴史を知ればわかる。第二次大戦後のアメリカにはまともな反戦映画は未だにごくわずかしかない。戦争否定が共通認識の日本ならばこの映画は批判されて当たり前だ(勿論軍事オタクが見に行くのは個人の勝手だが)。ここで重要なのは土井氏の批判は1962年に登場した娯楽戦争映画「史上最大の作戦」に向けられた批判と同じだという事で、当時ほぼ全ての映画評論家は戦争を娯楽にしたこの映画を批判した。
 2010年の今「史上最大の作戦」を西部劇だと批判する声はない、昨日3月9日のNHKBS2の放映では辺見えみり嬢が「一緒に楽しみましょう」との導入トークをした。この「ハート・ロッカー」も何年かあとには、なんの批判もされずにに当たり前に受容されるべき(それはすなわちイラク戦争は正しいとの意味に近い)映画になるだろう、それを防ぐためにもこの映画への評価は土井氏のような徹底批判が日本で共有されるべきだ。


 この映画への批判点=この映画のイラク戦争への態度は正しいのか?この映画のイラク戦争への立場は賛成なのか・反対なのか?イラク戦争を娯楽映画にしてよいのか?日本人も荷担し間接的にイラク人を殺した戦争その映画を日本人は何も考えず無責任に楽しむ事は許されるのか?(例えば沖縄戦を娯楽映画にして楽しむ事は許されるのか?)


出演:ジェレミー・レナー(ウィリアム・ジェームズ二等軍曹) アンソニー・マッキー(J・T・サンポーン軍曹) ブライアン・ジェラティ(オーウェン・エルドリッジ技術兵) レイフ・ファインズ(請負チームリーダー) ガイ・ピアース(マット・トンプソン軍曹) デヴィッド・モース(リード大佐) エヴァンジェリン・リリー(コニー・ジェームズ) クリスチャン・カマルゴ(ケンブリッジ大佐)
…死と隣り合わせの日常を生きるアメリカ軍爆発物処理班の男たちの姿を力強く描き出した緊迫の戦争アクション。テロの脅威が続く混沌のイラクバグダッドを舞台に、爆発処理チームのリーダーとして新たに赴任した破天荒な主人公ら3人の兵士が尋常ならざるプレッシャーに晒されながら爆弾解除に取り組むさまを、徹底したリアリズムで生々しくスリリングに捉えていく。

 2004年夏、イラクバグダッド郊外。アメリカ陸軍ブラボー中隊の爆発物処理班では、任務中に殉職者が出たため、ジェームズ二等軍曹を新リーダーとして迎え入れることに。こうして、サンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵を補佐役とした爆弾処理チームは、任務明けまで常に死の危険が孕む38日間を共にしていく。しかし、任務が開始されると、ジェームズは遠隔ロボットを活用するなど慎重を期して取るべき作業順序や指示を全て無視し、自ら爆弾に近づいて淡々と解除作業を完遂。任務のたび、一般市民かテロリストかも分からない見物人に囲まれた現場で張り詰めた緊張感とも格闘しているサンボーンとエルドリッジには、一層の戸惑いと混乱が生じる。そして互いに衝突も生まれるものの、ストレスを発散するように酒を酌み交わし、謎めいたジェームズの一面も垣間見ることで理解を深め結束していく3人。だがやがて、任務のさなか度重なる悲劇を目の当たりにしたことから、ある時ジェームズは冷静さを欠いた感情的行動に走り、3人の結束を揺るがす事態を招いてしまう…。
公式サイト:http://hurtlocker.jp/