<米軍が日本研究に使用した日本映画>
- チョコレートと兵隊(1938)東宝 佐藤武 前線の兵士とその子の文通△
- 土と兵隊(1939)日活 田坂具隆 兵士の苦労のみの戦争映画◆
- 君と僕(1941)朝鮮軍報導部 日夏英太郎 朝鮮人志願兵の促進◇
- 征戦愛馬譜・暁に祈る(1940)松竹 佐々木康 戦争映画、馬や戦友をいたわる日本兵◆
- 支那の夜(1940)東宝=中華電影 伏水修 中国人へのプロパガンダ◆
- 私の鶯(1938)満映=東宝 島津保次郎 中国人へのプロパガンダ◆
- 白蘭の歌(渡辺邦男)東宝 渡辺邦男 中国人との関係◆
- 熱砂の誓い(1940)東宝 渡辺邦男 中国人との関係◆
- 日の丸馬車(1939)大都(43分) 監督:西尾佳雄 銃後における国民精神を謳った中篇劇映画◆
- 姉の出征(1940)東宝 近藤勝彦 出演:高峰秀子 国策映画? △
- 母は強し(1939)松竹 佐々木啓祐 国策映画?△
- 母に捧ぐる歌(1939)新興キネマ 伊奈精一 国策映画?
- 母の願ひ(1940)新興キネマ 久松静児 国策映画?
- 嵐に咲く花(1940)東宝 萩原遼 福沢諭吉の話、日本国家の描写?△
- 日本人・明治編・昭和編(1938)松竹 島津保次郎 日本国家の描写?△
- 残菊物語(1939)松竹 溝口健二 芸道物、日本人の心情△
- 山内一豊の妻(1939)新興キネマ 牛原虚彦 日本人の心情?
- 女医絹代先生(1937)松竹 野村浩将 明朗な恋愛喜劇△
- 新編丹下左膳隻眼の巻(1939)東宝 中川信夫 主演:大河内伝次郎△
- The Rape of the Flute ?
第2次世界大戦に際しアメリカが接取した日本映画から日本研究のために参照した日本映画。接取が1941.7〜1942年に米国内の日系人映画業者が持っていた日本映画から行われたため、1939〜1940年の映画に集中している。リストを見ると(1)戦争映画(2)プロパガンダ映画(3)銃後の心得を説いたもの(4)日本国家を描写したもの(5)日本人の心情を描写したもの、などが選択されているように見える。これらの映画の分析結果は
◇「日本映画:心理学的な戦争の領域、20本の最近の映画によるテーマ、心理学的内容、技術的質、プロパガンダ的価値の分析」Japanese Films: A Phase of Psychological Warfare(OSSレポート、1944年)にまとめられている、このレポートの内容は
□戦時下アメリカにおける日本映画研究--『Japanese Films: A Phase of Psychological Warfare』を事例として / 長谷川倫子 コミュニケーション科学. (21) [2004]
□戦時下の日本映画の研究に関する一考察/ 長谷川倫子 メディア史研究. 18 [2005.6] 、で読める。
また同様に接取した日本映画などからこの時日本を分析したものが
◇菊と刀 / ルース・ベネデイクト 社会思想研究会出版部, 1948(The Chrysanthemum and the Sword : Patterns of Japanese Culture、Ruth Benedict、1946)である。
アメリカは同様に接取した戦時期のドイツ映画からドイツを分析しており、これは
◇大衆プロパガンダ映画の誕生:ドイツ映画『ヒトラー青年クヴェックス』の分析 / グレゴリー・ベイトソン 御茶の水書房(An analysis of the Nazi film “Hitlerjunge Quex、Bateson, Gregory、1943)
◇カリガリからヒトラーへ:ドイツ映画 1918-33における集団心理の構造分析 / S.クラカウアー みすず書房(From Caligari to Hitler : a psychological history of the German film、Kracauer, Siegfried、1946)
の形でまとめられている。これに対する批判は
▲板倉史明「映画と社会心理:S.クラカウアー『カリガリからヒトラーへ』」(所収:ポピュラー文化 / 井上俊編 世界思想社, 2009) で読める。
(「米国政府による日本映画の接収と軍事利用 / 板倉史明」所収:映画と戦争(日本映画史叢書第10巻) 奥村賢編 森話社, 2009)