zames_makiのブログ

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<米軍が日本研究に使用した日本映画>


第2次世界大戦に際しアメリカが接取した日本映画から日本研究のために参照した日本映画。接取が1941.7〜1942年に米国内の日系人映画業者が持っていた日本映画から行われたため、1939〜1940年の映画に集中している。リストを見ると(1)戦争映画(2)プロパガンダ映画(3)銃後の心得を説いたもの(4)日本国家を描写したもの(5)日本人の心情を描写したもの、などが選択されているように見える。これらの映画の分析結果は
◇「日本映画:心理学的な戦争の領域、20本の最近の映画によるテーマ、心理学的内容、技術的質、プロパガンダ的価値の分析」Japanese Films: A Phase of Psychological Warfare(OSSレポート、1944年)にまとめられている、このレポートの内容は
□戦時下アメリカにおける日本映画研究--『Japanese Films: A Phase of Psychological Warfare』を事例として / 長谷川倫子 コミュニケーション科学. (21) [2004]
□戦時下の日本映画の研究に関する一考察/ 長谷川倫子 メディア史研究. 18 [2005.6] 、で読める。

また同様に接取した日本映画などからこの時日本を分析したものが
菊と刀 / ルース・ベネデイクト 社会思想研究会出版部, 1948(The Chrysanthemum and the Sword : Patterns of Japanese Culture、Ruth Benedict、1946)である。

アメリカは同様に接取した戦時期のドイツ映画からドイツを分析しており、これは
◇大衆プロパガンダ映画の誕生:ドイツ映画『ヒトラー青年クヴェックス』の分析 / グレゴリー・ベイトソン 御茶の水書房(An analysis of the Nazi film “Hitlerjunge Quex、Bateson, Gregory、1943)
カリガリからヒトラーへ:ドイツ映画 1918-33における集団心理の構造分析 / S.クラカウアー みすず書房(From Caligari to Hitler : a psychological history of the German film、Kracauer, Siegfried、1946)
の形でまとめられている。これに対する批判は
板倉史明「映画と社会心理:S.クラカウアー『カリガリからヒトラーへ』」(所収:ポピュラー文化 / 井上俊編 世界思想社, 2009) で読める。


(「米国政府による日本映画の接収と軍事利用 / 板倉史明」所収:映画と戦争(日本映画史叢書第10巻) 奥村賢編 森話社, 2009)