zames_makiのブログ

はてなダイアリーより移行

<オバマの米軍グアンタナモ収容所の閉鎖について>

グアンタナモ収容所には現在240人収容されている。アメリカはキューバから永久租借したこの海外の米軍基地内の収容所に、テロ容疑者を収容した。9.11以降、ブッシュ政権はなんの法的根拠もなく数年以上もの長期間拘束し、水責めなどの拷問を使った尋問で取調べを行った。その結果収容者の一部は、併設された特別軍事法廷で裁かれ?、××刑務所などで禁固刑に服している?。(米国法により死刑はいない?)
 しかしブッシュ政権末期以降米国内からも批判が激しくなり、嫌疑の晴れた一部収容者は釈放されている。現在の収容者は有罪とできる十分な証拠のないもの?が多く240人いる。オバマ大統領は当初、特別軍事法廷を停止、グアンタナモ収容所を閉鎖しようとしたが、就任後方針を転換し、裁くための法的根拠を整備した上で、特別軍事法廷を再開し、収容者はアメリカ国内の刑務所へ収監か、各国刑務所への移送を行いたい模様だ。
 これに対し議会などアメリカ世論の一部(2009年5月現在では半分以下)は、キューバからアメリカ国内の刑務所に移動する事への不安、容疑者が釈放される事への不安から反対している。しかしその言い方は「アメリカの安全を脅かす」であり具体的内容はあまりはっきりしていない。チェイニー副大統領を筆頭にするその反対派の議論では、アメリカの安全のためという一言で、ここまで黙認されてきたアメリカ国家による収容者の人権無視をそのまま延長して恥じない認識が見られる。


連邦最高裁は2008年6月、テロ拘束者について「拘束の是非を争う憲法上の権利がある」として、特別軍事法廷の現状に「違憲」の判断を下している。


オバマ大統領は大統領選の公約でグアンタナモ収容所の閉鎖を掲げ、2009年1月就任直後に2010年1月の閉鎖への大統領令に署名した。


オバマ大統領は2009年5月特別軍事法廷でのテロ拘束者の審理を再開すると発表した。人権団体からは「変節だ」との非難も出ている。再開に当たり(1)非人道的尋問で得られた証拠の不採用(2)伝聞証拠の制限(3)証言拒否の保護−−などの改善策を導入する考えを示した。


米上院本会議は2009年5月20日グアンタナモ米海軍基地のテロ容疑者収容所閉鎖に必要な費用8000万ドル(約76億円)について、支出を認めない条項を追加した補正予算案を賛成90、反対6で可決した。下院も14日に閉鎖関連費用の計上を拒否する補正予算案を可決している。オバマ大統領は、身内の民主党からも抵抗に遭い、苦境に立たされている。これらの法案は2009年9月までは改正できないので、オバマグアンタナモ閉鎖という公約を実現するのに3ヶ月の期間しか使えない事になる。


オバマ大統領は収容所が「自由と正義」に基づく米国の憲法と法の支配を著しく傷つけたと指摘した。収容所閉鎖に反対する議会の考えは「間違っている」と強調。「閉鎖は難しく複雑な問題だ」と認める一方で、「ブッシュ前政権時代の『(テロの)恐怖』に基づく性急な措置が法の支配を揺るがした」と語った。

オバマ大統領は演説で容疑内容によって(1)連邦裁判所での審理(2)軍事法廷での裁判(3)裁判所の決定による釈放(4)本国や第三国への送還−−などのケースがあると指摘。そのうえで「容疑者を厳重に警備された施設に移し、米国の国家安全保障にとって危険な人物は決して釈放しない」と述べた。ここで最大の問題は、危険だと判断されるが拘束する十分な証拠のない収容者であり、オバマ氏が難題だと演説中でも述べている。

司法省は2009年5月21日、1998年のタンザニアケニアの米大使館爆破テロに関与したとして、2006年から収容所で拘束されているアハメド・ガイラニ容疑者をニューヨークの連邦裁判所で裁判手続きを行うと発表した。

オバマ米大統領演説要旨  2009年5月21日(中国新聞5月22日掲載)

1、米国の基礎となる価値観を大事にしなければ国の安全を守れない。国際テロ組織アルカイダとの戦いは、法の支配と適正な手続きにのっとって進めねばならない。
2、米中枢同時テロ後、米政府は恐怖に基づき拙速な決断をした。米国は道を踏み外した
3、テロ容疑者の過酷な尋問は敵の戦意を強くし、他国の米国と協調する意欲を弱めた
4、グアンタナモ収容所の存在は、かえって多くのテロリストをつくりだし、米国の安全保障を損ねた。だから閉鎖を命じた。
5、米国民を危険にさらす人物は釈放しない。グアンタナモの収容者の一部は米国内の強固な刑務所に移送を図る。一部は他国に移送する。
6、訴追することができず、かつ米国にとって危険な容疑者の存在は最も難しい問題だ。議会と共に、これに対処する正当な法的枠組みを構築する。
7、恐れに基づき決定を行い続ければ、さらなる過ちを犯してしまう。私たちは安全を守る上で、価値観を大切にする責任を共有している。

(当面の感想)

1:オバマの言う価値観とは「法の支配」の意味だ、大変重要であり遵守が求められる。こうした理念を演説で国民に呼びかけられる力には敬服する。日本の政治家にも見習って欲しい。
2:オバマアメリカは2001年には「恐怖のために政治を誤った」と総括した。素晴らしい分析と潔い反省だ。アメリカ人は宣伝にのりやすくすぐに道を誤る愚か者だが、それを振り返り反省し修正できる力があるのは見習うべき美点だ。日本では過去の事は、例えそれが今も相当に問題であり検討すべきなのがわかっていても「済んでしまえば終わった事」になりやすい。昭和天皇の戦争責任、日本の過去の戦争での残虐行為、従軍慰安婦問題、在日朝鮮人北朝鮮移送など今も問題は残る。
3:民主党は議会でも多数派でありオバマは支持者や民主党から説明が求められている。2009年5月現在で何がオバマから説明され、何を支持者が問題視しているか不明だ。しかし細部が不明でも「価値観という理念」を共有していれば、収容所を閉鎖しようとするオバマを頭から支持したはずだ、しかし支持しない。彼らは2009年の今も「恐怖で道を誤ったまま」米国の安全の為なら人権をいくら侵害してもかまわない、としている。米国人の多数である彼らはオバマほど高潔でも賢くもない。
4:アメリカは2007年従軍慰安婦問題では「人権問題という一般的原則」から日本を批判した。しかし自分の国が侵している人権問題にはその規則を適用しない。人は簡単な事をできない、他人を批判するは易く、自己批判と反省や軌道意修正は難しい。そういう愚かな存在が人間だ。
5:しかしこうした矛盾は国際政治では珍しくない、例えアメリカが世界一の軍事侵略国家でも、アメリカが正しい事をしている時は支持すべきだ。例えば、核兵器廃絶であり、中東和平への努力であり、日本への軍事に関する意見聴取(日本政府の意見を聞いて共によい方向にいきたいという協調主義の考え方)、日本人はこれらを支援し積極的に発言すべきだ。