zames_makiのブログ

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海角七号(2008)台湾

原題:海角七號  英語名:『Cape No.7』 →DVD発売 YesAsia\1647
台湾公開:2008年8月22日 配給 ブエナビスタ
監督 魏徳聖(サミュエル・ウェイ) 脚本 魏徳聖
出演者:范逸臣、田中千絵、中孝介、梁文音、林宗仁、民雄
...日本統治時代末期の日本人男性教師と台湾人女性の結ばれなかった恋が、60年後に恒春で開かれたコンサートをきっかけに今度は日本人女性と台湾人男性の間で結ばれるという形で過去と現在を結びつけたもの
...台湾南部の海辺の町、恒春(ヘンチュン)。ミュージシャンになる夢に破れ、10年間過ごした台北から故郷に戻ってきた阿嘉(アカ)は、郵便配達の仕事を始めた。そんな中、浜辺で開催される有名日本人歌手・中孝介のコンサートの前座バンドを住民たちで結成するというプランが持ち上がる。仕事で滞在していた日本人モデルの友子がバンドの取りまとめ役を任され、阿嘉を含めた6人の即席バンドの練習がスタートした。 
 ある日、阿嘉は「海角七号」という今はない住所に宛てた日本からの小包を見つける。中には、終戦直後に台湾を離れた日本人教師(中孝介2役)が台湾の女性に宛てて書いたラブレターが入っていた。この手紙をきっかけに、始めは反発しあっていた阿嘉と友子は深い絆で結ばれていく。
→第4回アジア海洋映画祭in幕張グランプリ受賞
→予告編:http://www.youtube.com/watch?v=hs2wKY5wl6E
→HP:http://cape7.pixnet.net/blog/

西日本新聞 2008/10/06

 台湾映画界に救世主 日台の恋描く「海角7号」ヒット ロケ地巡りにも人の波:ハリウッド映画に押され、人気低迷が続いていた台湾映画に救世主が現れた。日本人と台湾人の恋を描いた「海角7号」(魏徳聖監督)が興行収入2億台湾元(約6億6000万円)を超え、台湾映画では空前のヒットを記録。映画館に足を運ぶ人が増え、ロケ地は観光客でにぎわうなど社会現象を起こしている。 (台北・小山田昌生)

 台北市の映画街、西門町。「海角7号」上映中の映画館には、8月下旬の公開から1カ月半過ぎた今も行列ができている。台湾の人々の間では世代を問わず、「海角7号見た?」があいさつ代わりになっているという。

 物語は60年前に敗戦で台湾を引き揚げた日本人男性が台湾人の恋人につづった7通の手紙を、ミュージシャンの夢破れた若者が手にしたことから始まる。手紙に記されたあて先の戦前の住所がタイトルだ。全編を通して音楽と笑いがあふれ、時に涙を誘う。

 作品の評判はネットの掲示板を通じて若者に浸透、それをメディアが報じて、観客の世代も広がった。ロケ地となった台湾最南部の恒春半島には観光客が押し寄せ、女性主人公が泊まった海辺のホテルは連日満室。劇中で使われた先住民族の首飾りや地酒も売り切れが続出しているという。

 大スターも出演せず、制作費も約5000万台湾元と低く抑えたこの作品が人気を呼んだ理由について、映画評論家の王長安氏は「難解で重い台湾映画のイメージを全く変えたことが大きい」と語る。1990年代、台湾映画の芸術性は国際的に評価されたが、興行面の成績には結び付かなかった。「海角7号」は地方の庶民の日常を描き、観客には親近感がある。

 過去と現代の日台の心の触れ合いを描いたこともヒットの一因という。「日本の教育を受けた高齢の世代には懐かしく、日本の流行文化に親しんでいる若者にも受け入れやすい」(王氏)

 作品には日本人女優の田中千絵さんや奄美大島(鹿児島県)出身の歌手、中(あたり)孝介さんも出演。せりふは中国語と地元の台湾語、日本語が入り交じり、台湾の多元文化を反映している。

 同作品は9月のアジア海洋映画祭千葉市)でグランプリを受賞。今月の韓国・釜山国際映画祭にも出品され、国際的にも注目を集めている。日本での公開は未定。

 台湾映画に対する投資意欲は高まり、行政院(内閣)新聞局による新たな映画補助金制度も発足した。「『海角7号』の成功は台湾映画発展への転換点になるだろう」と王氏は期待している。

田中千絵インタビュー(SearchChina 2008/09/10)

「台湾ってかわいい!」―『海角七号』主演女優・田中千絵: 日本での芸能活動を経て、アジアで活躍する女優になろうと、中国語を学ぶために1人、台湾に渡ったのが2006年。語学留学を終え、荷物をまとめて日本に戻ろうとしていた時、映画の主演の話が突然、舞い込んだ。その作品『海角七号』(魏徳聖監督)が台湾で大ヒットし、なんとアカデミー賞の台湾代表作品候補にもエントリー。彼女は国際派女優としての道を歩き始めた。そんなシンデレラストーリーのヒロイン、田中千絵が9月初め、「アジア海洋映画祭イン幕張」のために来日し、「ガラスの靴」となった『海角七号』について、目をきらきらと輝かせながら語った。
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Q:台湾で大ヒットしている『海角七号』ですが、まずは出演することになった経緯を教えてください。
A:監督が中国語の話せる日本人女優を探していた時、スタッフの方がたまたま、私が中国語と日本語で書いているブログを見つけてくださって、オーディションに呼ばれたんです。本当にラッキーなことに、そのまま主演が決まりました。

Q:まさに、シンデレラストーリーですね。
A:『海角七号』は台湾では異例の40館で公開されて、今年の台北映画祭の最優秀賞を受賞したり、来年のアカデミー賞の外国語映画部門の台湾代表候補になったりと、私に本当にたくさんのラッキーをたくさん運んできてくれました。

Q:8月22日の台湾公開以来、興行収入がぐんぐん伸びているとか?
A:1000万台湾ドル突破の記念記者会見を開こうと思っていたら、いきなり2000万台湾ドルを超えてしまって、前売り券は発売するなり売り切れたり、とても反響が大きいですね。

Q:こんなにもヒットしているのはなぜでしょう?
A:登場人物がみんな、身近にいる感じで、自分の生活の中で本当に起きそうな物語なんです。私は、台湾ってかわいい場所だと思うんですけど、演じている人たちが自然体でそのかわいい部分を描き出しているから、観て下さった現地の人たちが『あ、台湾ってこんなにかわいらしいんだ』って気付くことができるっていうのが、ヒットの最大の要因だと思います。

 台湾映画はどちらかと言うと芸術性が強いんですが、『海角七号』は最初から最後まで、涙と笑いが繰り返すエンターテインメント作品。魏監督は『ドリンクとポップコーンを持って映画館で楽しんでほしい』と言っていました。
  あとは、音楽ですね。台北映画祭でも最優秀音楽賞をいただいたんですが、音楽がとても素敵なので、映画館で観るのが絶対にいい作品なんですよ。台湾人と日本人の時間とボーダーを超えたラブストーリーに、音楽を通して夢を実現したい人たちの姿が織り込まれていて、音楽がとても大事な要素なんです。
  そんないろいろが重なって、観て下さった台湾の方々がブログに『こんな映画、台湾にはなかった』とか、『これはまさに台湾の映画だ』って書いてくれるのを見ると、本当にうれしいですね。

映画『海角七号』の「媚日」に関する激論(チャイナネット 2008年12月8日)

http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2008-12/08/content_16917008.htm
台湾ヒット映画『海角七号』の「媚日」に関する激論:台湾で空前の大ヒットを記録した『海角七号』は、大陸部では12月に封切られるが、『海角七号』の政治 的メタファーに関する激論が、最近インターネットで繰り広げられている。

反対側:日本植民地文化の暗い影?:
 『海角七号』を「大毒草」(文化大革命の時に使われてた反革命的なもの)と名づけたのは、台湾の著名な伝記作家・王豊氏だ。王豊氏は10月10日、鳳凰博報のブログで、「『海角七号』は『大毒草』だ」という文章を発表し、「私からすればこの映画は『大毒草』で、日本帝国主義をほめたたえることでなくても、少なからず感傷的に昔のことを顧みる思いがある。だから私は決してこのブームは追いかけない」と記している。

上記の文章が発表された2時間後、王豊氏は再び「『海角七号』は絶対に『大毒草』だ」という文章を発表し、前の文章に示した結論の理由を、「この映画は日本人の心で問題を考えており、日本植民地文化の暗い影がある」と説明した。

この文章は大きな反響を呼び、大陸部ではインターネットで『海角七号』の上映をボイコットする声がますます大きくなり、賛成側と反対側との論争もエスカレートしていった。


賛成側:『海角七号』は『海角七号』:
台湾のベテランマスコミ関係者で、10年にわたって両岸の報道に携わってきたハンドルネーム「胡同台妹」は、王豊氏の見方に反対だ。

北京で働いている「胡同台妹」は、ブログ「胡同の中の台妹」で、「『海角七号』と『大毒草』とはどんな関係があるのかと聞かれれば、私は多分あぜんとして吹き出してしまうだろう。私の気持ちの中では『海角七号』は『海角七号』」と書いている。

10月に台湾に帰った「胡同台妹」は、よく知っている人も知らない人もみんな『海角七号』について話していて、70歳を超える両親も10数年ぶりに映画館に足を運び、母親はもう一度見に行きたいとまで言ったという。

映画の中の普通の台湾人のユーモアや頑張りに感動する人は多いが、物語は60年前の7通のラブレターをめぐって展開しており、日本の要素が非難の的になった。


監督:観客は自分なりの価値観がある:
 王豊氏は台湾で最も貴重なものは中国文化の遺産で、「台湾意識」や「台湾精神」は、「台湾独立」ウィルスの変種に過ぎないと一貫して強調している。

これに対して「胡同台妹」は、「魏徳聖監督はこの映画を撮影した時とても貧しく、エキストラさえも十分に雇えず、最終的には不動産を抵当にしてお金を借り、やっと撮影を終えることができた。そんな中で政治的メタファーに気を配る余裕があっただろうか」と述べている。

魏監督は今月、シンガポールの『連合早報』の取材を受け、映画製作を考えた時に政治的な構想があったかどうか質問され、「これは観客たちの発想で、私は愉快な態度で応対します。映画を見た観衆たちは自分なりの感慨や共感があり、自分たちの物語を持っています。それはいいことで、観客たちが得た価値です」と語っている。


大陸部のネット利用者の大半は映画を支持:
 海峡両岸関係協会の陳雲林会長が代表団を率いて台湾を訪問した時、『海角七号』を観賞し、映画の中に出てきた台湾の少数民族醸造したお酒の「マラサン」も味わった。

大陸部はすでに『海角七号』を導入し、全ての審査過程も1カ月以内に済ませた。専門家によると、陳雲林会長の訪問など両岸の一連の交流活動は、『海角七号』の審査通過に良好な雰囲気を創出したという。

海角七号』がまもなく大陸部で上映されるが、大陸部の大部分のネット利用者はこの映画を支持している。「娯楽をいつも政治問題にする必要はない」「これは映画で過度に解釈する必要はない」など、こうした意見は映画を本質的な態度に戻させるかのようだ。