zames_makiのブログ

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米新政権と日米同盟の課題

日時:2008年12月18日(木)
時間:9:00〜13:30
会場:帝国ホテル東京(内幸町)本館2階「孔雀の間」
主催:日本経済新聞社・米戦略国際問題研究所CSIS
受講料:無料

主催者挨拶 杉田 亮毅(日本経済新聞社会長)
議題紹介:ジョン・J・ハムレ(CSIS所長、元米国防副長官)
基調講演:「スマート・パワーと米国の新たな外交政策ジョセフ・ナイハーバード大CSIS理事、元国家情報会議NIC議長)
パネルディスカッション1:「オバマ新政権と日米関係」
 <パネリスト>ジョン・J・ハムレ、ジョセフ・ナイカート・キャンベル(新米国安全保障研究所(CNAS)、CSIS副所長、元米国防副次官補)、マイケル・グリーン(元米大統領補佐官・国家安全保障会議上級アジア部長、CSIS上級顧問、米ミャンマー問題担当特使 兼 政策調整官)、谷内正太郎(前外務事務次官)、

特別講演:「米国の新しい東アジア戦略」ジェームズ・ケリー(CSIS、元米国務次官補、元六カ国協議米国首席代表)<コメンテーター>カート・キャンベル
パネルディスカッション2:「アジア太平洋地域における米国の安全保障戦略
<パネリスト>ジョセフ・ナイ、ジェームズ・ケリー、カート・キャンベルマイケル・グリーン、西原正(前防衛大学校長、平和・安全保障研究所
質疑応答:パネリストなど
http://www.nikkei-events.jp/csis/index.html#summery


シンポの詳細報告は、日経新聞の12月29日朝刊
シンポジウムメモ=平岡秀夫ブログより(http://ameblo.jp/hideoh29/entry-10180063609.html

オバマ政権のこれからの外交安全保障政策を占うことができるかもしれません。
 
1、ジョン・J・ハムレ(CSIS所長、元国防副長官)
 オバマ新政権が直面する3つの重要課題は次の通りである。?世界規模の経済危機を克服できるか、?核兵器の拡散を防げるか、?様々なグローバルな問題(環境、エネルギーなど)に対する国際的な協力機関の再構築。これらの課題は、米国が世界で尊敬される指導者にならなければ、解決できない。その意味で、今回の大統領選挙は、米国民の選択の結果であり、その結果は良かった。

 日米関係は良好であるがエキサイティングではない。これは、「レストランに行っても会話をしない老夫婦」のようなものだ。中国も新しいチャンスがあって大事だが、日米関係が絶対に重要な基盤であることを理解すべき。自動車産業のあるデトロイトは大きな危機に直面しているが、日本の自動車メーカーを責めていない。新しい関係に入っていると言えるが、このような良好な関係が未来永劫続く保証はない。


2、ジョセフ・ナイハーバード大教授、CSIS理事、元NIC(国家情報会議)議長)
 オバマ政権の新外交政策のジレンマは、ブッシュ大統領負の遺産である。それは、?経済危機、?二つ(アフガン、イラク)の戦争、?テロとの戦い、?中東問題である。これらの過去の問題に対処しつつ、新しい課題に取り組んでいかなければならない。(以下、箇条書き的に)
・ブッシュは「グローバルなテロとの戦い」と言っているがこれは逆効果を生んでいる。アルカイダは、これを「グローバルなイスラムとの戦い」とし、「文明の衝突」を想起させようとしている。
・これからは、「スマートパワー」の時代である。「スマートパワー」とは、ソフトパワー(文化、経済、技術など)とハードパワー(軍事)の賢い組み合わせで、相手に働きかけをする力のことである。
・政策は、「ハードな押し付け」より「ソフトな牽き付け」が重要。
・「リベラルなリアリスト的政策」が世界秩序の実現につながる。
・対日政策は、超党派的政策なので、米国が民主党政権になっても対日関係が悪化することはない。
・最近、米政府高官による北京訪問がたびたび行われているのは、米中間で解決すべき問題が多いから。
・日米が共同して、中国の台頭を管理する必要がある。中国は問題のある国であり、国際社会における「責任あるステークホルダー」にすることが、米日の共通の課題。
ミサイル防衛に対する日本の協力を評価する。海賊対策には海上自衛隊による貢献が望ましい。国連平和維持活動(PKO)に対し、もっと参加すべき。もっとできることがあるはずだ。


3、カート・キャンベル(CNAS(新米国安全保障研究所)CEO、CSIS前・副所長、元国防副長官補)
・日本は、ODAなどを通して世界の安定に大きく貢献している。
・米国は、困難な問題(2つの戦争、経済危機、気候変動など)を抱えているので、日本に対し支援と励ましを求めている。
・日米間にオープンな対話が必要。アフガニスタンにさらに焦点が向けられる。アフガニスタンの問題を解決する上で、日米間に尊敬しあう関係が生まれることを期待する。


4、マイケル・グリーンCSIS上級顧問、元大統領補佐官
・対北朝鮮政策について民主党共和党の間で戦術的な差はあるが、戦略に差異はない。
・「日本は要」という米国の戦略は変わらないが、米中関係は成熟した関係にはならない。
・日米同盟に枠組みの中で、日本側がYes, we can.と言うべき。No, we won’t.と聞こえてしまうことがある。日本の海上自衛隊はとても優秀で評価が高い。インド、ブリュッセル(NATO)、オーストラリアは日本がさらなる役割を果たすことを歓迎する。海賊対策については、日本が主導的な役割を果たすべき。 
集団的自衛権に関する議論についてであるが、戦略が先ずあるべき。集団的自衛権はツールの一つである。アジアの地域戦略を日米間で作成する必要がある。
自衛隊は、ソフト、ハード両面で素晴らしい活動をしている。
自衛隊は、国連平和維持活動(PKO)に対し、もっと参加すべき。


5、ジェームズ・ケリー(CSIS上級顧問、元国務次官補、元6カ国協議米国首席代表)
超党派の5つのシンクタンク、150人が関わっている「東アジア戦略概観」は来年1月に完成し、オバマ政権にも影響を与えるであろう。
・日米同盟は米国のアジア太平洋における基盤。「核の傘」が機能している。
在日米軍という形での米軍の前方展開戦略は、今後も重要な役割を果たす。
・米国は、中国に対するリスクヘッジとしてアジアに兵力を維持している。兵力の維持は、中国に対し、軍事紛争を許容しないという姿勢を示している。
北朝鮮は、自らが核を保有することによって、国際的地位を高めることを期待している。
・対北朝鮮関係については、外交も失敗したが、圧力を掛けることも失敗している。
・核問題に関し十分に検証可能な枠組みを構築できれば、拉致問題の解決にも結び付くことになる。

琉球新報記事 2008年12月19日「日米同盟シンポ 「オバマ氏期待」に警鐘」

 日本経済新聞社、米戦略国際問題研究所(CSIS)共催シンポジウム「米新政権と日米同盟の課題」が18日、東京・帝国ホテルで開かれ、オバマ次期政権下での外交政策について、米国の軍事専門家らが討論した。登壇者らは、オバマ氏に対する周囲の期待感が高すぎることに警鐘を鳴らし、中国の台頭や金融危機、気候変動に日米がどう対応するかが重要だとの認識で一致した。

 前大統領補佐官マイケル・グリーンCSIS日本部長は、普天間飛行場移設が長年進んでいないことについて「新政権で計画を白紙に戻そうと考えるのは問題だ。両政府の信頼がかかっている。合意した政策を実施することが重要だ」と述べ、ロードマップに従うべきだと主張した。

 元国防副次官補のカート・キャンベル新米国安全保障研究所CEOは、日本の防衛相が頻繁に変わることを指摘し「実のある議論ができない。一貫性のある環境を望む。米国がいつも一方的に利益を求めるのではなく、両国の利益について対話することが重要だ。もっと率直な議論を期待したい」と述べた。アジア太平洋での米軍のプレゼンスは「今後も継続する」と述べた。

 元国家情報会議議長のジョセフ・ナイCSIS理事は「よく日本人から対日政策は変わるかと聞かれるが答えはノーだ。中国へのかかわりが注目を集めているが、日米同盟は党を超えた基盤であり、(対中政策を通して)むしろ日本の重要性は増すだろう」との見解を示した。

 元国防副長官のジョン・ハムレCSIS所長、元国務次官補のジェームズ・ケリーCSIS上級顧問も参加した。2つの討議会の司会は前外務事務次官谷内正太郎早稲田大客員教授、前防衛大学校長の西原正平和・安全保障研究所理事長がそれぞれ務めた。