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東大・朝日シンポジウム「21世紀、日本文明の可能性」

掲載:朝日新聞2008年12月10日 場所:東京・本郷の東大安田講堂 日時:2008年11月22日
http://www.asahi.com/shimbun/sympo/081122/index.html

ジョン・アイケンベリー(プリンストン大学教授)

日本はリベラルなグローバルな文明を規定するのに貢献してきた。ここにこそまさに日本の未来があると思います。資本主義、開かれた市場、法の支配、安全保障、協調、多国間主義、文化の多元性、個人の権利でありながら普遍的な諸権利によって形づくられている世界のリベラルな秩序のことです。リベラリズムというのを考えてみると、個人の権利に対する約束です。それと寛容さをも包含しており、人とのつき合いにおいて寛容であるということもリベラリズムの定義には入るわけです。

リベラルな秩序は200年間の競争の末、冷戦の終了した現在、優位となった。
1790年においてはリベラルな秩序があったとは言いがたかった。リベラルで民主的な国はいくつかありましたが、そうした国の数は少なく、脆弱でした。英国、フランス、オランダ、アメリカなどで、それほど重要とも言えませんでした。20世紀になって、これらのリベラルな国々は強くなったわけです。
 (リベラルを重んじる)これらの国々は戦争をしました。ファシスト帝国主義共産主義といった選択肢と、資本主義の将来、モデルをかけて競い合ったわけです。

 日本はこのドラマ(競争)における重要なプレーヤーでありました。日本は市場資本主義に転じ、ある意味でそれを完成させた。第二次世界大戦後にそれを成熟させました。そして、日本は国連やグローバルな機関、そして紛争の平和的解決を支持しました。日本は非核主義をとり、それを核兵器を持たず、使わないという新しい倫理的な規範にしたわけです。そして、米国と共に西洋型のリベラリズムをグローバルな協力の枠組みにつくっていきました。

 リベラルな世界文明は日本とドイツを(国際秩序に)統合し、世界経済を開放しました。そして、リベラルな国々が冷戦に勝ったわけです。この間に、この米国の力こそ、国際秩序にとって重要で価値があり、一貫して進歩的な方向性を与えたのです。冷戦後、このシステムはさらに広がり、旧ソ連諸国と民主主義への移行期にある途上国を包み込んでいきました。

最も重大と思われる3つの問題は、1つは公共財の提供=地球の温暖化に集団として対処すること、2つは法の支配を再び強調すること(拷問を禁止する、グアンタナモ基地の閉鎖、倫理規範の再確立)、3つは安全保障同盟の再生(日米同盟を両方向の同盟にするということ、つまりお互いに相談し、協議し、新たな協力をつくり合う機会を提供するということ)。

藤原帰一(東大)

要旨:日本は国際協調主義の大国であり、今まで大国でありながら抑制して、自国のみの利益を追求せず協調行動をとってきた。これはよい事だ。今はそれを持続し、アメリカに反応してどうこう・中国と競争してどうこうではなく、大国として自国が世界にできる事という視点で行動すべきだ。

戦後の日本は自国は遅れているという認識が強かった、欧米先進国に追いつけという意気込みだった。高度成長後、今度は日本は凄い、「美しい日本」「とてつもない日本」という自己愛で自分を大国と呼ぶナショナリズムが高揚した。しかしそこにはアジアの視点はなく、実際には小国だけどナショナリズムによって日本は大国だと言っている。

 しかし現実的に見れば日本は大国だ。そして大国であるということは自己愛とかナルシシズムを述べ立ててよい存在という事ではなく、むしろ大きな責任を伴う存在だということを、日本人は考えていない。
 第二次世界大戦後、日本は、安全保障においては日米同盟重視、市場としてはアジア重視、さらに経済外交の重要性といった道筋を打ち出した。同時に国際主義(国連中心外交、国際社会との協調ということ)を原則とした。これは単独行動を回避するということ、日本が単独でイニシアチブをとったり、自分の利益を主張することはしない、ほかの国と一緒になってやりましょうということだった。
 これは例外的な経済大国でありながら、多くの国とチームプレーヤーとして行動する日本というものをつくり上げた。その例は、ASEANの価値を高めたこと、日本はほとんど毎回外務大臣を送り、ASEANとともに行動するということを長らくとってきた。この国際主義の原則とは、結果的には大国でありながら、大国が自分の権力を自制してチームプレーに徹するということです。


大国としての日本のなすべき事は、
1つは、日本の国際関係での役割を考えるときに、どの国が世界の中心なのか、どの国が世界で強いのか、これを戦国時代のように考える見方は現実的でない。現実から乖離した無効な見方だ。実際にはアメリカ経済が倒れるときには我々も倒れる。今やグローバリゼーションで、世界は経済がつながっている、アメリカが弱くなることは、同時に世界各国に影響が及ぶということです。=>全体で考えよ

2つは、今回の世界金融危機を前にして、アメリカに要求されたら困る、保護主義になったとき困るではなく、現在の金融制度を立て直すために日本に何ができるのかを考えなければいけない。