zames_makiのブログ

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パッテンライ!!〜南の島の水ものがたり(2008)

アニメ映画 90分 日本 初公開年月 2008/11/15(金沢市
製作:『パッテンライ!』製作委員会、北國新聞社虫プロ 監督:石黒昇 美術監督中村光毅 主題歌:一青窈『受け入れて』
http://www.mushi-pro.co.jp/pa-tenrai.html
かいせつ:日本領下の台湾における社会基礎整備には、日本から様々な分野の優秀な技術者が派遣されました。その中のひとりに八田與一もいました。東洋で比類なき大規模の灌漑事業を台湾の民衆と力を合わせて成し遂げたことや、そのことにより60万人もの農民の生活に恩恵をもたらせたことは『飲水思源』という恩を忘れない地元台南の人たちの心により語り継がれ、時を隔てた今も、年に一度ダムの畔にある八田夫妻の墓の前で追悼の法要が行われています


物語:舞台は日本領下の台湾。その南西部に位置する嘉南平原は不毛の大地と呼ばれていた。総督府から技師として派遣された八田與一は、この地に広大な灌漑施設を造るという計画を立てる。その信憑性を疑う地元の農民たちは八田に対して敵意を抱く。その中に農民の子、英哲もいた。英哲は八田の土木にかける切実な想いに動かされ、次第にダムの必要性を理解し、自らも土木技師になる夢を抱くようになる。現場の近くの宿舎に移り住んだ日本人作業員の家族の中に、ススムという少年がいた。ススムの夢は飛行機乗りである。英哲と意気投合した二人は、互いの夢を語り合う。そんなある日、トンネル工事中の爆発事故により、五十余名が殉職していまう。被害者の中にススムの父親もいた。工事の中止が囁かれ、八田は苦悩に陥る・・・。

制作した北國新聞の社説(2008年11月16日)

「パッテンライ!!」多くの小中高生に見せたい
きょうから一般公開されるアニメ映画「パッテンライ!」は、かつてあった教条的な「偉人伝」とはまったく違う。金沢出身の土木技師・八田與一が戦前の台湾で取り組んだ巨大ダムと水路建設の夢を縦軸にして、日本人と台湾生まれの少年が友情をはぐくみ、たくましく成長していく姿を描いた人間ドラマである。

日本社会には今、自分さえ良ければ、人に迷惑をかけても構わないと考える、行き過ぎた個人主義がはびこっている。「私」を捨て「公」のために働く喜びや、夢を持つことの素晴らしさを説いても、どこかむなしく、説得力を持ち得ない。そんな時代だからこそ、てほしいと思う。

乾いた大地に網の目のように水路を巡らせ、豊かな穀倉地帯に変えようと奮闘する八田技師の姿は、当時の台湾の人々には、巨大風車に突っかかるドンキホーテのような存在に見えただろう。映画の序盤で、農民たちが台湾語で言う「パッテンライ(八田が来た)」の言葉には、そんな蔑(さげす)みの色がにじむ。

理想を現実に変えていく八田技師の情熱は、やがて周囲の見る目を変え、「パッテンライ」の響きを蔑みから尊敬へと変えていった。公のために粉骨砕身する八田技師の姿は、かたくなな農民たちの心を解きほぐし、希望の灯をともし始める。映画に登場する日本人技師の子ども「ススム」と、貧しい農民の子「英哲」がそうであったように、映画を見る子どもたちもまた、大きな志を持って、公のために尽そうとする八田技師の生き方から、多くのことを学ぶだろう。

台湾総統李登輝氏は、八田技師が手掛けたダム事業に、日本人の優れた精神的価値観を見て取った。ダムや水路の設計に才能を発揮しただけではなく、少ない水を平等に分け合う「三年輪作」の発想や民族の違いで人を区別しない人間性は、単なる「土木屋」の域を超えている。そこが八田技師の魅力であり、今も台湾の人々に敬愛されている理由でもある。この映画を通じて、私たちが失いかけている「日本的精神」のかけらを取り戻せたらと思う。