zames_makiのブログ

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リダクテッド 真実の価値(2007)REDACTED

製作国 アメリカ/カナダ 初公開年月 2008/10/25
監督: ブライアン・デ・パルマ 脚本: ブライアン・デ・パルマ
出演: パトリック・キャロル ロブ・ドゥヴェニー イジー・ディアス マイク・フィゲロア タイ・ジョーンズ ケル・オニール ダニエル・スチュワート・シャーマン
オフィシャル・サイトhttp://www.cinemacafe.net/official/redacted/
2007年ヴェネチア国際映画祭 監督賞受賞 ブライアン・デ・パルマ

上映 10/25(土)〜ロードショー

シアターN渋谷http://www.theater-n.com/schedule.html

映画評 毎日新聞(2008年10月24日)

しあわせ映画レシピ:2人の巨匠が主観映像を意識

怖い映画を見た。一本は、07年のベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞したブライアン・デ・パルマ監督の最新作。手持ちカメラの効果満点の作品だ。

 「リダクテッド〜」は、「カジュアリティーズ」でベトナム戦争について語った巨匠デ・パルマ監督が、イラク戦争で実際に起きた事件を題材に“巨大企業メディア”に挑んだ意欲作。まるでドキュメンタリーでも見ているようなリアルな映像と、テレビのニュースやインターネット、動画サイト「YouTube」などの映像を巧みに組み合わせて真実に迫ろうとした、デ・パルマ監督の主張がビシビシと伝わってくる映画だ。

 若い兵士が日常生活をビデオカメラに収めている。兵舎というよりは、大学の寮のような無邪気な様子で、仲間たちが次々に映し出されていく。このカメラが、やがて悲惨な事件を目の当たりにしていくのだが……というストーリー。

 無名の俳優たちによる演技と、手持ちカメラの映像で、冒頭に「フィクションだが、すべて事実に基づいている」という但し書きが映し出されたことを忘れるくらいの生々しさを生み出している。「リダクト(redact)」とは、編集、出版のための準備を意味する言葉。私たちは日ごろ、誰かの手によって加工された報道を目に耳にしている。そりゃあもちろん、戦場の写真や映像の中にはエグ過ぎて掲載できないものもあるし、すべてを垂れ流すだけでは報道とはいえないし、マスメディアとはいえないと思う。
 しかし、事実が隠されて曲げられ、塗りつぶされていたとしたら別だ。そのことによって混乱が生じているのだとしたら……。この作品は「カジュアリティーズ」と同様の題材、つまり米兵によるレイプ事件を繰り返し描かなければならなかったという・デ・パルマ監督の“嘆き”に満ちている。だから映画を見て、憎悪の念を抱くアメリカ人がいても当然だとも思う。ここには戦争の醜さが描かれているのだから。戦争の前では、兵士も市民も同じ犠牲者だ。この映画は、巨匠の手による世界最高の“再現ドラマ”だ。