zames_makiのブログ

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ユナイテッド93(2006)UNITED 93

上映時間 111分 アメリカ 初公開年月 2006/08/12
監督: ポール・グリーングラス 脚本: ポール・グリーングラス
出演:全て無名俳優
...2001年9月11日、乗客40人を乗せたユナイテッド航空93便は、なぜかターゲットに到達することなく、ペンシルヴェニア州に墜落した。
 本作はこのユナイテッド航空93便に焦点を当て、家族との電話で自らの運命を悟った乗客たちが乗る機内での様子や、テロの事実に混乱しながらも被害を最小限に食い止めようと必死で事態の掌握に務める地上の航空関係者たちの緊迫のやり取りを極限の臨場感で描き出す衝撃のノンフィクション・サスペンス。
 監督は「ブラディ・サンデー」「ボーン・スプレマシー」のポール・グリーングラス。監督をはじめ製作スタッフは、遺された家族の人々や管制センターはじめ関係機関への入念な取材を行い、今となっては決して誰も知ることのできない機内の様子を含め、当時の状況を可能な限りリアルに再現、<ありのままらしさ>を徹底したドキュメンタリー・タッチの手法で撮り上げた。なお、本作に登場する管制官や軍関係者の一部は、9月11日に実際に現場で勤務していた本人が自ら演じているという。
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アメリカでの映画の受け止め方:http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20060514
ユナイテッド93便の乗客たちは身を挺してテロリストと戦った英雄とされ、「レッツ・ロール!」は愛国的な流行語になり、ブッシュ大統領も演説で使ったりした


ユナイテッド93』は製作発表された時から批判にさらされた。「ハリウッドはあの悲劇を見世物にするつもりか」「不謹慎だ」「まだ事件の記憶が生々しすぎる」
 航空パニック映画風の予告編が映画館で流れ始めると、NYマンハッタンの映画館では観客から「こんなものを流すな」と苦情があって予告編の上映を中止した。そのため、途中から新しい予告編に変わった。その予告編は本編からの映像はあまりなく、ドラマチックな音楽やナレーションもない。まず、監督のポール・グリーングラスが「なぜ、この映画を作ろうと思ったのか」を説明する。 続いて、墜落したユナイテッド航空93便の犠牲者の遺族が次々に出演し、「あの人がどのように死んだのか、知ってもらうために、この映画の取材に協力しました」と訴える。そして最後には、93便の遺族への基金についての字幕が出る。『ユナイテッド93』の第一週の興行収益の1割がその基金に寄付されるのだ。この予告編は、「金儲け目的じゃありません、真面目な映画です」という言い訳みたいなものだ。


 ところが、4月末に映画が公開されるとマスコミは大絶賛だ。 全米の新聞雑誌の映画評を集計するサイトRottenTomatoesによれば全媒体の91%が『ユナイテッド93』を推薦している。
 批評を見てみると、「NYタイムズ」のマノーラ・ダージスは感動しまくり。「映画が終わった時、観客の頬には涙がつたっていました。一組のカップルが無言でかたく抱きしめあっていました」 ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、ジョージ・F・ウィルは「『ユナイテッド93』を観ることは国民の義務だ」とまで書いている

でも、絶賛だけじゃない。 同じワシントン・ポスト紙のポール・ファーヒは、機内の模様は憶測にすぎない、つまりフィクションなのに、ドキュメンタリーのように見せていることは事実の捏造だと批判している。たとえば、公式の調査では、最後まで乗客はコクピットに入れなかったと推測されているが、映画では最後に乗客がドアを破ってコクピットに突入してハイジャッカーと操縦桿の奪い合いになる。 しかも、その前に乗客は二人のハイジャッカーに襲いかかって、彼らを血祭りにするシーンまである。実際は何があったか誰にもわからないのに。
 ハリウッドが実話を映画化すると、映画が脚色したことが、その後、事実として記憶されてしまうことが多い。ただ、『ユナイテッド93』は擬似ドキュメンタリー風なので、ドラマ以上に罪が重いかもしれない。


 また、「NYタイムズ」のフランク・リッチも辛らつだ。「今さら、こんな映画を作っても遅すぎる。テロへの報復を理由にブッシュ大統領イラクに攻め込み、その後、イラクとテロとは何の関係もないことが判明したのに」