zames_makiのブログ

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夕日と拳銃(1956)満州大陸浪人の物語

=内容なしの戦時期を背景にした娯楽映画、満州=王道楽土を公言
満州=王道楽土という戦前思想そのままの檀一雄の娯楽原作を、戦闘シーンなどの肝心の場面を全て省いた「記録的な手抜き映画」。映画だけでは物語不明であり、映画には日本の貴族の三男が、富士か北海道の原野のあばら屋でおつきの者からちやほやされる場面しかない。 前編=日本&馬賊編、後編=満州軍から中国山東省への出陣まで、となっている。満州軍の描写あり。満州での抗日派として金日成の娘?との交流が描かれ、主人公の中国への移動には金日成が見送りに現れる(台詞なし)。 全編に焦点は主人公の馬賊頭領張学良への反抗=射殺?あるらしいがその場面はない。ひたすらあばら屋で仲間からちやほやさえるだけ。幼な馴染みの従者の娘の頭にリンゴを載せ拳銃で撃ち落とすのが演出。 後半には満州の場側を殺した関東軍に刃向かうシーンあるが、それの意味や彼へのおとがめシーンはない。日本軍は悪いが、主人公=馬賊はよいという奇妙な観念で描かれている。終始満州が舞台だが船による出航や、歴史経緯を示す場面、中国人の生活実態や、日本との関係、溥儀の様子のシーンなどなく、ただひたすら荒野のあばら屋で主人公がおつきの者(日本人)からちやほやされる。映画ラストは1941年頃で日米開戦もない。原作での戦犯裁判は省略されている。

満州を舞台に娯楽映画を作りたいが、戦前のイデオロギーを扱いたくない、という製作側の事情で意味不明の作品になったよい例。同様に作に日活最後の大作あり。

原作「夕日と拳銃」檀一雄(1955年 新潮社)

あらすじ(アマゾン=角川文庫)

満州の荒野を駆けめぐり、満蒙独立という壮大な夢とロマンを追い、燃え尽きた男、伊達麟之助の生涯。伊達家に生まれ、満州に渡り山東自治聯軍に参加、戦後処刑された伊達順之助がモデル。檀一雄が、実在の日本人馬賊をモデルに描いた壮大なスケールの長編小説。発表当時、各方面から大絶賛された名作。
 時は大正末期。伊達政宗公を遠祖にもつ伯爵家に、九州から一人の男がやってきた。男の名は伊達麟之介。幾多の学校を転々としては放校退学を繰り返す無法者ながら、胸がすほどの豪傑さで、人々を惹きつけていく。しかし、麟之介が放った拳銃の一発が、彼の運命を劇的に変えていく―。
 拳銃による殺人事件を起こした伊達麟之介は、詮議の末に放免されるや、狭い日本を出奔、中国大陸へ。そこで出会った馬賊に入る。やがて、日本人でありながら馬賊の首領となる麟之介。蒙古独立運動に加わったかと思えば、満州での楽土建設に参画し、激動する日中関係を背景に奔走する。しかし終戦。麟之介は戦犯として捕らえられ死刑になる。

(123分・35mm・カラー)
東映の若手時代劇スターとして、中村錦之助と人気を二分した東千代之介の現代劇初出演作。東映東京撮影所のカラー映画第1作でもある。大正から昭和初期の中国東北部大陸浪人と称された主人公が時には銃を構える和服姿で登場し、バックには戦前のヒット曲が流れる。
'56(東映東京)(監)佐伯清(原)檀一雄(脚)澤村勉(撮)藤井靜(美)森幹男(音)古関裕而(出)東千代之介、南原伸二、花澤徳衞、宇佐美諄、浦里はるみ三條美紀進藤英太郎高倉健、今井俊二、高木二朗、波島進、小澤榮、千田是也、日野明子

上映 NFC

4/24(木) 7:00pm 5/16(金) 3:00pm

あらすじ(キネ旬

血と黄塵、満蒙の原野に跳梁する馬賊の群!若き名門の反逆児、伊達麟之介の半生を描く。檀一雄の長篇小説より「恐怖の逃亡」の沢村勉が脚色.
大正八年、群雄相争う戦乱の満洲。ピストルの達人伊達麟之介は堅苦しい華族の生活を捨てて、後見役逸見六郎と奉天張作霖の下にやって来た。だが元来、野性児の彼は鹿爪らしい張の許を去り、東蒙古、馬賊パプチャップの独立運動に加わる。彼を愛する余り、同じく日本を捨て後を追う山岡厳山の娘綾子も麟之介は意に介さない。張作霖との戦闘は麟之介の奮戦にも拘らずパプチャップ軍の壊滅。彼は逸見にパプチャップの遺児チチクを託し、野人九曜山の集落へ。そこには男装の娘アロンがいて彼を慕う。逸見はチチクを連れ奉天に戻り、綾子は欧州へ旅立つ。入れ代って向島の賭博師日笠団蔵の妹こうが麟之介を追って来る。アロンは綾子の存在を嫉妬して麟之介を射つ。傷ついた彼は九曜山の計いで療養のため日本へ。旅行から戻り早速、麟之介を見舞った綾子は、枕頭に侍る植木屋松源の娘千代に驚く。病癒えた彼は、逸見の便りで再び綾子にも内密で渡満。逸見はおこうと結婚しチチクを育てていた。おこうは再会に動揺、だがすでに逸見の子を宿している。昭和六年、満洲事変勃発、麟之介は満洲国軍少将として国境の町臨江へ警備司令官に着任。彼は逸見と平和な楽土建設に努力。しかし戦火は絶えず、逸見の建設した桃源境にも敵軍が侵入。おこうはチチクを守って死に、逸見も傷ついて馬賊王鳳閣に看護される。だが平和建設の闘士王は妻子諸共、日本軍の中山少佐に銃殺される。怒りの末、少佐の官邸で暴れた麟之介は、山東省に左遷されることになる。彼を頼って訪ねて来た千代、成長したチチク、綾子と弟慎太郎、そして満洲解放の闘士、金日成やアロンに送られ、麟之介は愛用の拳銃を恋人として放浪の旅路に出発した。