zames_makiのブログ

はてなダイアリーより移行

無意識に天皇崇拝(=国家神道)をする最近の若者

最近の若者は自分が国家神道を奉じている事を自分で理解していない。
 今の天皇は「象徴」であり、日本国憲法の成立経緯を知れば象徴の意味は平民であるのは明らかだ(それまでは主権者であり神であり絶対上位者だった、そして天皇を絶対上位者として「敬意を払う」事を要求するのが国家神道の本質だった。=島薗進国家神道と日本人」を参照せよ)。天皇に手紙を渡すだけで「無礼だ」と言う今の若者は自分がすすんで戦前の天皇=神、を奉じている事を理解していない。そして同じ事が多くの大人にも言える。そしてその大人もほぼ全員が戦後生まれであり、国民主権の教育を受けその価値観を身につけているはずなのだが。
 森達也天皇に親近感を抱いているがそれは現在の”天皇個人”の個性が民主主義尊重であるせいだ。次の天皇がその本性をむき出しにして昭和天皇のように国民に暗黙的な形で命令を下す(ある行為を促す)ようにならないと制度は保障していない。なぜなら天皇の政治利用とは何か?誰も定義していないからだ。天皇が国家的式典の際に政府自民党の対外姿勢を強調する形で発言をした場合、それを咎める現象が今のマスコミ、大学教授、知識人そして一般市民に起こり得るようにはとても思えない。市民の中には政府の方針・政策活動に反対している人がけして少なくないのを皆が知っている筈なの!でさえも。政府の態度を上塗りするような天皇の姿勢・あり方はそれ自体が政府による天皇の政治的利用であり、天皇は国民を扇動するとても有力な「装置」だろう。それにつけても、天皇に敬語を使うような日本人は本当に愚か者である。

内なる天皇制(森達也)(朝日新聞記事2013年11月27日)

http://digital.asahi.com/articles/TKY201311260611.html?ref=pcviewer
:内なる天皇制 若者に醸成された強いタブー意識 左派にも依存意識/森達也明治大学特任教授、ドキュメンタリー映画製作者

戦後約70年が経ち、天皇陛下に対する私たちの意識は変わったと思っていたが、違った。久々に耳にした「不敬」は、私たちは変わったというよりは、天皇についてただ考えなく、語らなくなっているだけなのだと教えてくれる。だから語ってもらおう。かつて憲法1条=天皇をテーマにドキュメンタリーを撮ろうとした、森達也さんに。

園遊会山本太郎参院議員が天皇陛下に手紙を渡した件は、参院議長が厳重注意し、落着しました。(記者聞き手・高橋純子))

「『常識を欠くもので、極めて遺憾』と。しかし常識というのはとても恣意的な言葉です。何のルールを侵したのか明示されないまま、ペナルティーが与えられる。極めて日本的なやり方ですっきりしませんね。そもそも手紙を渡すことがどうして『政治利用』になるのでしょう。強いて言うなら『政治利用未遂』だし、それ以前に、利用するとかされるとか、それこそ天皇に失礼じゃないですか。僕だったら『私はモノじゃない』と言いたくなります」(森達也)「騒動後に社会とメディアにあふれた言葉は『政治利用』だけではなく、『非礼』や『失礼』、そして『不敬』でした。この国の『内なる天皇制』はこれほどに強固だったのかと感じ入りました」


―どういうことですか。
「大学の授業で、学生たちに山本さんの行為をどう思うかを聞くと、一様に『失礼だ』『不敬だ』との答えが返ってきました。その表情は真剣です。『天皇がとても困っているように見えた』とか『手紙を片手で渡すなど失礼だ』などと発言する学生もいました。でも『例えば学生が学長に、あるいは社員が社長に手紙を渡すことは非礼なのか?』と聞くと『それは違います』と。『ではなぜ天皇に対しては非礼になるのか?』と重ねて聞けば、『確かになぜでしょうね』ときょとんとしている。彼らは平成生まれです
なのに天皇はタブーに囲まれた特権的な存在だという意識をいつの間にか内面化している。これが『内なる天皇制』です。今の若い世代は権威に従順で空気に感染しやすいので、自然とそうなってしまったのでしょう」


 ――とはいえ歴史を踏まえれば、天皇の政治利用は許されません。
 「そうですね。しかし天皇制の歴史は、時の政治権力に利用され続けてきた歴史ともいえる。その究極がアジア太平洋戦争です。政治利用のリスクを本当に退けたいなら、戦後、天皇制を手放すべきでした。しかしアメリカは日本の占領統治を円滑に進めるために、天皇制を残したほうがいいと考えた。そのために昭和天皇は戦争に積極的ではなく、軍部に利用されただけだという『物語』を強調しました。その副産物がA級戦犯で、天皇制を守るためにA級戦犯に責任を背負わせた。だから昭和天皇今上天皇も、A級戦犯が合祀されて以来、靖国神社を訪れたことはありません」


 「ところが自民党の歴代首相は靖国神社参拝に意欲を見せ、その一方で改憲して天皇国家元首にしようと。これほど倒錯した政治利用はありませんが、自民党も国民も気づいていない。そのレベルで戦後を過ごしてきたからこそ、山本さんの件では表層的な批判が宙を舞い、『内なる天皇制』や皇室タブーがさらに強化され、本質的な議論がますますしづらくなったと思います」

 「今年4月に政府が主催した『主権回復の日』を祝う式典への天皇、皇后の出席が政治利用だと指摘されました。天皇、皇后が退席する際、会場から『天皇陛下万歳』の声がかかり、安倍晋三首相や麻生太郎副総理も万歳したことも批判された。でも話はそこにとどまりません。その後にアップされた政府のインターネットテレビの動画をみると、なぜか『天皇陛下』の音声だけが消えています。数秒間無音になって、唐突に『万歳』が聞こえてくる。意図的かどうかは別にして、これこそ非礼でしょう。少なくとも万歳三唱の際の天皇の表情は、山本さんから手紙を渡された時よりも困惑しているように僕には見えました」


――原発反対の一点で支持され、国会議員になった山本さんが、その原発問題について天皇に「直訴」する。戦後の民主主義とはいったいなんだったのでしょうか。
 「民主主義や主権在民という言葉がむなしく響きます。結局は与えられたままになっているということです。その理由の一つは、やはり天皇制にあると思います。統治者と被統治者という緊張関係があるからこそ、被統治者の権利への意識が覚醒し、民主主義は実体化する。しかし日本では、天皇制がその緊張関係に対する緩衝材のような役割を
果たしてきました。為政者にとってはとても都合の良いシステムです」


――山本さんの弁明は「この胸の内を、苦悩を、理解してくれるのはこの方しか居ない、との身勝手な敬愛の念と想いが溢れ、お手紙をしたためてしまいました」でした。

 「まるで一昔前の恋文ですね。でも考えてみれば、山本さんほど直情径行ではないにせよ、天皇に対する信頼がいま、僕も含め、左派リベラルの間で深まっていると思います」「きっかけのひとつが、2001年の天皇誕生日に先立って記者会見し『桓武天皇の生母が百済武寧王の子孫であると続日本紀に記されていることに、韓国とのゆかりを感じています』と語ったことです。さらに10年にも、やはり桓武天皇に触れながら『多くの国から渡来人が移住し、我が国の文化や技術の発展に大きく寄与してきました』と。最初の発言は小泉政権下。日韓関係が冷え込んでいました。2度目の発言は、尖閣諸島沖で中国漁船による衝突問題が起きた1カ月後です」

 「04年の園遊会では、当時東京都教育委員だった棋士米長邦雄氏が『日本中の学校で国旗を掲げ、国歌を斉唱させることが私の仕事』と発言したのに対して、『やはり、強制になるということではないことが望ましい』と応じた。快哉を叫んだ左は多かったと思います。明らかに天皇は一定の意思を示していて、追い詰められるばかりの左に
とって最後の希望のような存在になってしまっている。倒錯しています。でも白状すると、その心性は僕にもあります」


――権力や権威に常に懐疑の目を向けてきた森さんが、天皇にそんな思いを抱いているとは意外です。

 「直感でしかないけれど、人格高潔で信頼できる方だと好感を持っています。そしてそういう自分の心情も含めて、危なっかしいなあとも思います。天皇への依存感情が生まれているわけですから。戦後約70年かけて、また戻ってきちゃったなと」


 「政治家も官僚も経営者も私利私欲でしか動いてないが、天皇だけは違う。真に国民のことを考えてくれている。そんな国民からの高い好感と信頼が今の天皇の権威になっていると思います。昭和天皇は遠い存在でした。遠くて見えないことが、権威の源泉になっていた。しかし今上天皇からは肉声が聞こえるし、表情もうかがえる。だから右だけではなく左も自分たちに都合よく天皇の言動を解釈し、もてはやす。いわば平成の神格化です。天皇は本来、ここまで近しい存在になってはいけなかったのかもしれませんね」

 「そもそも人間は象徴にはなり得ません。ひとりひとり個性があるからです。表情や発言に感情がにじんでしまうことがある。寿命があるから代替わりもする。象徴天皇制は、どんなキャラクターの人が天皇になるかによってその相貌が変わる、実はとても不安定な制度です」「天皇が『現人神』のままでは占領統治がうまくいかないと考えたアメリカの意向を受け、昭和天皇は『人間宣言』をし、象徴天皇となった。ここで捩れてしまったのです」


――ただ、天皇への思い入れが薄い若い世代が増えれば、状況はずいぶん変わってくるでしょう。

 「僕もそう思っていましたが、今回、それは違うと気づいた。老若男女を問わず日本人は好きなんですね、『万世一系』という大きな物語が。日本は世界に例をみない特別な国なんだという、インスタントな自己肯定感を与えてくれますから」

 「天皇制は、選民思想を誘発します。この国の近代化の原動力の一つは、他のアジア諸国への蔑視であり優越感で、敗戦後もその感情は持続しました。だからこそ原爆を二つ落とされ、首都は焼け野原になって無条件降伏をしたのに、二十数年後には世界第2位の経済大国になった。確かにこれはミラクルです。しかしGDP(国内総生産)は中国に抜かれ、近代化のシンボルである原発で事故が起き、日本は今後間違いなく、ダウンサイジングの時代に入ります。でも、認めたくないんですよ。アジアの中のワン・オブ・ゼムになってしまうことを。ひそかに醸成してきたアジアへの優越感情をどうにも中和できない。その『現実』と『感情』の軋みが今、ヘイトスピーチや、『万世一系』神話の主役である天皇への好感と期待として表れているのではないでしょうか」

 「結局、戦後約70年をかけてもなお、僕たちは天皇制とどう向き合うべきか、きちんとした答えを出せていない。山本さんの軽率な行動は図らずも、このことを明らかにしてくれました」