zames_makiのブログ

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ドレスデンの和解とは何か?(柳原伸洋)への感想

http://dotreview.jp/blog/2010/08/15/co_article030/
ネット上にある「ドレスデンの「和解」とは何か?」(柳原伸洋)を読んだ。戦争記憶論・戦争認識論という私にとって関心の深いテーマで序文では期待したが、内容はあまりに期待はずれだった。柳原伸洋氏にはその執筆中の博士論文に以下の点を期待したい。

東ドイツ時代、ドレスデン空襲は死者40万人と言われ空襲の悲惨さを宣伝する力があったという。ではそれにより英、米、ソ連、ドイツの政府、軍、民間はどんな影響を受けたのか?空襲の悲惨さを訴えた活動はいかなる効果をあげたのか?それはゲルニカや広島原爆と比べてどうなのか?あるいはホロコーストと比べてどうなのか?

2上記は、その宣伝は無差別爆撃禁止という点ではあまり効果をあげなかったと推測されるがそれはなぜか?その規模のためか?その爆撃動機のためか?それが東側だったからか?

ソ連東ドイツドレスデンの被害をどのように宣伝したのか?報道、文学、映像はどうだったのか?それらはあまり活発ではなかったと推測されるがなぜか?

4東西統一後死者数が見直されたがそれはどんな影響を与えたか?英、米について「ドレスデンはたいした事はない」となりそれは空爆肯定の効果を持ったのか?そうでないのならなぜか?

5現在のドイツ人にとってドレスデン空襲はいかなる意味を持つのか?そのドイツ人死者の多さ・悲惨さは、ドイツが行ったロンドン爆撃とどう関係づけられるのか?また近年ドイツがNATOの一員として行った旧ユーゴでの空爆とどう関係づけられているのか?
 (即ち、ドイツ人のドレスデン理解とは単にホロコーストを越えて自国の死者を宣伝するという意味だけなのか?ドイツ国がおかした全く同じような残虐行為はそこで見えているのか?)

6和解の事実とは具体的に何か?政府・自治体・民間で何が行われたのか?また論者が要求する和解とは何か?
(即ち、英独の和解とは単に双方が双方の殺害の責任追求と非難を中止し、双方が双方の死者を追悼するという表面的なものなのか?)

7英独の和解とは、双方の死者を悼むという表面的な精神なのか?それとも戦争における双方の犯した無差別爆撃への反省と否定と言う戦争への分析・批判を伴っているのか?またドレスデン空襲の被害者であるドイツが、旧ユーゴでは同じ方法で加害者となっている事に、政府・自治体・民間は反省できているのか?
 (即ち、現在のドイツ人は、65年前のドイツ人とイギリス人への無差別爆撃だけを追悼し、その他の無差別爆撃は正当化しているのか?ドレスデンを追悼するドイツ人は、ゲルニカ東京大空襲での死者や、北爆でのベトナム人死者や旧ユーゴでの死者を同じように追悼するのか?それらへの責任を感じているのか?)

映画「ドレスデン、運命の日」(2006独)でドラマ中で示されているのはドイツ人看護婦とアメリカ軍人、つまり独=米の和解であり、最後に意味づけなしに記念式典場面が示される。また映画はドレスデン空襲の目的は英国のソ連への力の誇示(デモンストレーション)であり、敵国戦闘員の殺害や生産力の破壊という通常認められる戦闘目的からあきらかに外れた違法な非人道的行為だったとほのめかしている。この映画の示す意味は何か?
(即ち、映画は単に添え物としてアメリカとの和解だけを恋愛ドラマで示し、英国には厳しくその残酷さを告発している。その上で英国にそれを認めさせた上で、謝罪を伴う相互理解を要求しているように見える。果たしてそうか?それとも映画は式典での英独の和解を寿ぐ事を前提としており、ドイツ人のいう和解とは、論理性や責任論などなく、単に双方の傷をなめあうだけのものなのか?)