zames_makiのブログ

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不毛地帯(2009)TVドラマ

=戦犯として11年のシベリア抑留体験をもつ元陸軍人が、戦後商社員として航空自衛隊の次期戦闘機購入で立ち回る。
=第1話構成:「正しい」軍人の主人公が、無理に天皇を戦犯にしようとする醜いソ連軍の扱いや、国際法を無視した酷い抑留生活を生き抜いて帰国し、シベリアで死んだ軍人たちをしっかりと記憶し・追悼しながら、けして「再び過ち」をすまい、又軍には関わるまいという決意の元に戦後11年目に第2の人生をスタートする。商社に入った主人公はそこで防衛庁権力者(官房長?)の勝手な判断で適当でない機種が購入される事を知り、「再び間違い」を犯させないように次期戦闘機の購入合戦へ参加する事を決意する。
 戦争の反省が購入合戦への参加の理由にすり替わってしまう、ある意味欺瞞に満ちた戦後の日本の自衛隊を象徴する物語展開となっている。主人公は傷ついた兵士を救うため、又末端の兵士の帰還を見届ける為満州に残り抑留される、確かに彼は軍に対してはよく責任を取ろうとする、しかし民間人にはまったくとっていない。又「間違い」とは一般的には日本が「侵略戦争を起こした事」であるはずなのに、ここでは「合理的判断をできなかった事」になっており、戦争を起こしたことを主人公は(暗黙的には)反省していない。
 主人公は11年の抑留生活を経てその期間の新聞を集中的に読む機会があり、戦前の日本と戦後の日本を比較し、憲法の改正や軍の放棄などを、眼前の問題として認識できるはずなのにそうならない。憲法改正で日本から軍がなくなったはずなのに、自衛隊の存在をまったく当然視し、自衛隊への就職を当たり前としている。更にその自衛隊が国民の監視を受けぬまま、巨額の軍事費を使う事を、悪い事だとの見る事もしておらずまったく「間違い」を反省していない。彼のしている事は戦前ままである。
 原作では上記の「悪の告発」の意図があったのではないか?(原作未読)。しかしドラマの主眼はそうした自衛隊批判より、購入合戦の様々な出来事にあると思われ、結局細部にしか視聴者の眼は注がれず大きなテーマは見逃される、今後そうした演出が続くのではないだろうか。

制作:フジテレビ 原作:山崎豊子不毛地帯』脚本:橋部敦子 演出:澤田鎌作 / 平野眞 / 水田成英  55分×N(2009年10月15日〜)
主演:唐沢寿明(壹岐正)=主人公、復員軍人から商社員に第1話では何もしない●
和久井映見(妻)=懸命に夫を支える戦争中後の苦労描写なし、
柳葉敏郎防衛庁)=唐沢と陸軍仕官学校で同期、防衛庁内での友人●
段田安則防衛庁)=防衛事務次官?敵
原田芳男(近畿商事社長)=唐沢をひきぬく、戦闘機商戦にひきこむ
橋爪功(谷川中将)=シベリア抑留で一緒、戦後も部下の抑留者の事を考える●
天海祐希(クラブの女)小雪(シベリア抑留で一緒だった中将の娘)●
竹之内豊(兵頭)=陸軍仕官学校の後輩、近畿商事の鉄鋼担当●


…(第1話)陸軍士官学校を首席で卒業し、第二次大戦中は軍の最高統帥機関である大本営の参謀として作戦立案にあたっていた壹岐正(唐沢寿明)は、終戦を受け入れず、日ソ中立条約を侵して侵攻してきたソ連軍に対する徹底抗戦を主張する関東軍を説得するため、停戦命令書を携えて満州に向かった。そこで、関東軍の幕僚・谷川正治橋爪功)らとともにソ連軍に拘束された壹岐は、戦犯としてソ連の軍事裁判にかけられ、強制労働25年の刑を宣告されると、一度送られたら二度と生きて帰ることはできないといわれたシベリア極北の流刑地ラゾに送られてしまう。
 生死の境をさまよう過酷な強制労働を11年もの長きに渡って耐え抜いた壹岐は、昭和31年に帰国する。それからの2年間、壹岐は、強制労働によってむしばまれた体の回復と、シベリアから一緒に帰国した部下たちの就職の世話に専念した。その間は、妻の佳子(和久井映見)が大阪府庁民生課で働きながら家計を支えていた。
 そんなある日、壹岐のもとに、士官学校時代からの親友で、防衛庁の空将補である川又伊佐雄(柳葉敏郎)がやってくる。川又は、この国を守るために一緒に働いてほしい、と壹岐を防衛庁に誘った。しかし壹岐は、自らが関わった作戦により、多くの兵士や民間人を死なせてしまった責任から、もう国防に関わる資格はない、と答えて川又の誘いを断った。

原作

山崎豊子不毛地帯 上下」1976年 新潮社 

不毛地帯(1976)東宝

公開年月日1976/08/28  監督:山本薩夫 脚本:山田信夫 原作:山崎豊子 音楽:佐藤勝
主演:山形勲(大門近畿商事社長)仲代達矢壱岐正)北大路欣也(ニューヨーク駐在員)田宮二郎(鮫島航空機部長)
…二次防衛計画の主力戦闘機買い付けに暗躍する商社とそれらと癒着する政財界の黒い断面を描く。
…近畿商事社長・大門一三は、元陸軍中佐・壱岐正を、嘱託として社に迎え入れた。壱岐の、かつて大本営参謀としての作戦力、組織力を高く評価したからである。総合商社の上位にランクされる近畿商事は、総予算一兆円を越すといわれる二次防主力戦闘機選定をめぐって、自社の推すラッキード社のF104、東京商事の推すグラント社のスーバードラゴンF11、五井物産の推すコンバー社F106、丸藤商事の推すサウズロップS156を相手に、血みどろの商戦を展開していた。

不毛地帯(1979)TV連続ドラマ

不毛地帯 MBS 55分×N 1979/04/04 〜 1979/10/31
演出:河野宏 原作:山崎豊子 脚本:鈴木尚之 出演:平幹二朗山本陽子若山富三郎、川谷拓三、池上季実子中村敦夫江藤潤
解説:商社マン壱岐正の、戦後三十年の生きざまと航空機売り込みをめぐる激しい商社戦を描く。同名原作をもとにした映画版につづくテレビドラマ化…

山崎豊子の原点は戦争体験(毎日新聞 2009年11月26日)

戦時体験、創作の原点 山崎さん、作品の思い吐露−贈呈式

 25日に東京都内で開かれた第63回毎日出版文化賞の贈呈式。病を押して出席した作家の山崎豊子さんは戦時下の体験に触れ、いまだ衰えない作品への熱い思いを吐露した。山崎さんは人間ドラマを描く社会派作家として知られる。「不毛地帯」「大地の子」など戦争をテーマにした作品も多い。受賞作の「運命の人」も、沖縄返還をめぐる日米の密約問題を扱った。
 山崎さんは戦時中、勤労動員先でバルザックの「谷間の百合」を読んでいたところを担当将校に見つかり、殴られたという。「私の作家としての書く方向がはっきりしました」と戦時下での体験が、創作の原点であることを語った。「神様にお願いできるなら私の青春を返してくださいと言いたい。もっと勉強し小説を読みたかった」。いったん言葉を切った山崎さんは、再び舞台正面に戻って万感の思いを語った。戦争に翻弄(ほんろう)された無念の思いが書き続けるエネルギーになったのだろうか。会場からはひときわ大きな拍手が送られた。