zames_makiのブログ

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愛を読むひと(2008)THE READER

アメリカ/ドイツ 初公開年月 2009/06/19 ホロコースト映画
監督:スティーヴン・ダルドリー 製作:アンソニー・ミンゲラシドニー・ポラック
原作:ベルンハルト・シュリンク『朗読者』(新潮社刊) 脚本: デヴィッド・ヘア
出演: ケイト・ウィンスレットレイフ・ファインズブルーノ・ガンツ
...切なく官能的な愛の物語。第二次世界大戦後のドイツを舞台に、ひ弱な一人の青年とはるかに年の離れた謎めいた女性が繰り広げる禁断の愛の行方と、やがてふたりに訪れる悲壮な運命を

読売新聞 映画評(2009年6月19日)

愛を読むひと」 (米・独) 戦犯女性 悲恋の行方
 原作はベルンハルト・シュリンクの小説「朗読者」。これをスティーヴン・ダルドリー監督は、主人公の弁護士(レイフ・ファインズ)による回想物語へと装いを変え、濃密な小説世界を再構築した。戦後ドイツの時代精神を反映した痛切な恋愛悲劇である。15歳の少年(デヴィッド・クロス=写真左)が年上の独身女性(ケイト・ウィンスレット=同右)と恋に落ちる。21歳という年齢差も何のその、少年による文学作品の朗読というベッドの上の儀式によって二人の関係は深まる。が、ある日突然彼女は姿を消す。ミステリアスなサスペンス劇を思わせるが、急転直下8年後に二人は法廷で再会する。戦争中に収容所で働いていたナチ親衛隊の元看守の被告と、それを傍聴する法科大学生として。

 1960年代、初めてドイツ人がドイツ人を裁いた「アウシュヴィッツ裁判」が背景にある。この女性も戦争犯罪を裁かれるのだが、貧しさゆえに満足な教育を受けられなかった過去をひた隠しにしたため、あえて自分に不利な証言を認めて無期懲役に。識字問題にほんろうされる彼女の苦悶と、判決を黙認せざるを得なかった法科大学生の悔恨の情。果たして二人の関係は修復へと向かうのか。法廷に秘められた過去の苦い記憶。その言葉にならない深い思いを、ウィンスレットが見事に体現する。特に法廷から刑務所の面会に至る後半は、沈黙の中にも激しい葛藤と苦悩をにじませて出色。アカデミー主演女優賞も納得の名演である。(映画評論家・土屋好生