zames_makiのブログ

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風にそよぐ葦(1951)情報局批判

=情報局の悪辣さの批判、フィルムは失われている?
別題?:風にそよぐ葦〜愛の終戦篇 製作:東横映画 配給:東京映画配給 公開:1951.01.19 10巻
監督:春原政久 脚本:八木保太郎 原作:石川達三「風にそよぐ葦」前編・後編
出演:薄田研二(出版社社長・葦澤悠平) 北沢彪(葦澤の長男。元左翼学生、憲兵に殺される)木暮実千代(葦澤裕子、その妻、広瀬によろめく) 岡田英次(広瀬軍曹、内務班班長、夫の仇) 岡田茂(倉村少佐=鈴木康三、葦澤に言論弾圧を加える)東山千栄子

メモ

鈴木康三(情報局)1938.8陸軍省情報局新聞班→(鈴木時代)→輜重学校1942.4→1942.8満洲ハイラル輜重部隊に配属→1944熊本の輜重部隊に→戦後帰還

参考書

言論統制 佐藤卓己 中公新書 2004=情報局の言論弾圧者として小説&映画「風にそよぐ葦」で悪人として有名な官鈴木康三の伝記、

◇参考:雑誌「平凡」で特集記事あり、類似作品:いとし子と耐えてゆかん、日本の悲劇(木下恵介)、モンテンルパの夜はふけて、巣鴨の母、さらばラバウル

あらすじ

前編:昭和十六年、日本国民が戦争の悪夢にとりつかれていたころ、雑誌“新評論”社長葦沢悠平の長男で弁護士の泰介に召集令状が来た。新婚数ヶ月の妻榕子は身体も弱く戦争忌避を望んでいる夫をどうにかして召集免除にして貰おうと一途に考え、堀内退役中将に頼んだ。だが、結果は思わぬ不幸を招き、学生時代左翼運動に身を投じたこともある泰介は、危険思想の要注意人物として堀内中将から憲兵隊本部に報告された。一兵卒として入隊した泰介に辛い軍隊生活が始まった。その彼をいつも慰め励ましてくれるのは新聞記者上がりの宇留木二等兵だった。その年の冬、日米開戦と同時に軍の士気はますます鼓舞し、激しい訓練が日夜行われた。ある夜間演習の際、泰介は剣鞘を失い、広瀬軍曹から蹴られ、営倉に入れられたのがもとで肋膜になり、ついに死んだ。“新評論”は悠平の義兄清原節雄の自由主義思想の原稿の故に発行停止を命じられそうになったが、時局便乗に巧みな岡部編集長の力で持ちこたえられた。泰介の弟の邦男は兄や父の冷静な戦争傍観を憎み、航空士を志願して、その若い情熱を愛国心に集中する青年だった。榕子の妹有美子はその彼にひたむきな愛情を捧げた。榕子は葦沢家から実家の児玉医院に戻り、無聊な生活をまぎらすため陸軍病院の薬局室に勤めた。そこで大腿部盲管銃創の患者と知り合った。彼は男性的な力強さで彼女の心に波紋を与えた。その頃、宇留木が帰還して榕子を訪れた。彼もまた、この美しくしかし孤独な戦友の未亡人に何か心惹かれた。脚の悪い曹長の求愛は日毎に露骨になって来た。だが、彼こそは、榕子にとって夢にも忘れ得ない亡夫泰介の仇、広瀬軍曹であったことを知った彼女は、彼への復讐を固く心に誓った。

後編:

榕子は強引に自分に求愛し自分もそれにいささかひかされていた広瀬が亡夫の仇敵であったと知って、彼からの贈り物をつき返すため広瀬を尋ね、かえって彼から犯されてしまった。悄然と家に帰った彼女の許に、宇留木からの求愛の手紙が来ていた。数日後宇留木が訪ねて来たとき、榕子は彼にすべてを打ち明けて結婚した。やがて宇留木は同盟通信社から満洲へ派遣され、終戦と共に消息を絶った。児玉家の焼け残った母家に住んで、榕子は女の児を生んだ。葦沢家の邦男は復員して来たが、敗戦に荒ぶれた彼の眼中には最早有美子の存在はなく、有美子はひとり淋しく死んで行った。児玉博士はその衝激で脳溢血で殪れた。榕子は、母と子をその細腕で養って行かなければならず、尾形ふさ子に応接間を間貸ししたりしてしのぎをつけた。闇ブローカーから広瀬に近づいた邦男は、広瀬から彼と榕子との関係をきかされ欲情をあおられ、風呂帰りの榕子に襲いかかろうとした。しかし、暗い生活にも光りの射す日がやって来た。宇留木が思いがけず帰って来たのである。一本のビールに酔って得意の歌をうたう夫の顔を、榕子は苦難に衰えた頬をつたう涙を拭おうともせず見上げるのだった。