zames_makiのブログ

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ドキュメンタリー「未決・沖縄戦」(2008)

戦争ドキュメンタリー 製作:じんぶん企画 構成:輿石正 89分
http://www.edic-121.co.jp/


2008年6月4日 琉球新報
【名護】映画制作や沖縄関連書籍の制作を手掛けるじんぶん企画(輿石正代表、名護市)がこのほど、北部の沖縄戦体験者の証言をまとめたドキュメンタリー映画「未決・沖縄戦」を制作した。北部に地域を限定した証言映画としては初の試みで、輿石さん(62)を中心に各地に出向き聞き取りした。輿石さんは作品を通し「沖縄戦中南部の激戦地だけで起こったのではなく、ヤンバルに避難した住民生活の末端にまで影響を及ぼし、全体を巻き込んだものだ」と問題を投げ掛けている。

 映画はカラーの90分作品。愛楽園と沖縄戦、八重岳、多野岳伊江島での戦闘、捕虜収容所の様子、朝鮮人軍夫の存在など、体験者の話を軸にまとめた。タイトルの「未決」には、「沖縄戦はまだ終わっていない」「映画が終わりでなくこれが始まり」という2つの意味を込めた。制作のきっかけは、昨年9月の教科書検定意見撤回を求める県民大会への参加だ。「沖縄戦の伝え方が体験者の言葉を借りてパターン化している。自分の足で現場に出向き、もっと掘り起こすべきではないかと感じた」
 北部の各地域に残る字誌を読みあさり、沖縄戦の記録が残る地域を駆け回った。一番印象に残ったのは、伊江島での「集団自決」(強制集団死)生存者・大城安信さんを取材した時のこと。これまで重く口を閉ざしていたという大城さんだが、取材を承諾してくれた。当時9歳だが記憶は鮮明で、自ら記した文章と絵を持参していた。しかし現場に向かう途中で、大城さんは決して振り向かず、一言も口を開かなかった。「その背中は話す覚悟を決めたという感じだった。いい映画にしなくてはと思った」と心に誓った。
 証言者がカメラに慣れるまで撮影を続け、1人3時間以上かかったという。28人を取材し、9人から取材を拒否された。「証言者は氷山の一角。その背後につらくて語れない心の傷を抱えた生存者や声なき戦没者の姿を見通すことが大切だ」と撮影を振り返った。
 無料上映会が21日午後6時30分から、同市大中区公民館で行われる予定だ。映画はDVDとして発売予定で、定価3000円(消費税、送料込み)。


朝日新聞 2008年08月12日<窓>終わらない沖縄戦
 沖縄県名護市の予備校で教壇に立つ輿石正(こしいしまさし)さん(62)が沖縄本島北部の戦争体験者の証言を記録したドキュメンタリー映画「未決・沖縄戦」を制作した。
 本島北部に限定した沖縄戦の証言映画としては初の試みだ。沖縄戦中南部の激戦地だけで起きたのではなく、戦闘だけが戦場ではない、という思いがある。
 制作のきっかけは、昨年9月に開かれた教科書検定意見の撤回を求める県民大会だ。「歴史の書き換えは許さない」と沖縄は燃え上がったが、その脈絡がわからないという声が生徒から出た。約10年前から、北部の各地域に残る70冊以上もの字誌など郷土史誌を読みあさってきた輿石さんは教師として責任を感じた。
 映画では13人が旧日本軍による住民虐殺や、朝鮮人慰安婦の存在などについて生々しく証言している。大城安信さん(75)は伊江島で起きた「集団自決(強制集団死)」を語った。24人中2人しか生き残らなかった惨劇について、これまで重く口を閉ざしてきたが、県民大会の盛り上がりに心を動かされた。
 輿石さんが取材を申し込んだのは32人にのぼる。いまなお拒否せざるを得ない人のなんと多いことか。体験者にとって沖縄戦がいまだ終わっていないことを如実に物語る。証言者の言葉の背後には、おびただしい「不在の証言」が横たわっているのだと痛感する。
 映画はDVDで発売中。定価3千円。問い合わせはじんぶん企画(0980・53・6012)へ。