zames_makiのブログ

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村上春樹とサッカー選手はどちらが知識人にふさわしいか(ガザ攻撃に抗議したサッカー選手)

 日本で最も有名な作家の一人、村上春樹は2月始めにイスラエル文学賞を貰うが、彼がそこで何を言うかネット上の人間からは注目されている村上春樹が本当に人間に思いをめぐらすまともな知識人であれば、イスラエルのガザへの攻撃に触れてそれを止めるよう訴えるのは、政治的な信条ではなく、人間としても知識人としても当たり前の行為だろう。

 その例を以下のサッカー選手が示している。今のサッカーではルールで試合中にシャツをめくってメッセージを送ることが禁止されている。それを承知で2選手が「ガザの事を考えて欲しい!」とメッセージを送った。カヌーテ選手は「自分はしなければいけないと思った事をしただけだ」と答えている。彼は人間として当たり前の事をしただけだと答えていると思う。

 高名な学者であるE.サイードは知識人とは「常にマイノリティーの立場に立ちながら、その集団に属することなく、むしろマイノリティーを選別する境界線の存在を否定していく人」「権力に対して真実を語ろうとする言葉の使い手」としている。イスラム文学研究者の岡真理さんは、(村上春樹への批判ではなく一般的現象として)発言するのが当たり前であり、発言せず黙っている事自体がイスラエルの積極的支持だと言っている。村上春樹は自分に忠実ないわゆる作家らしい作家であると同時に、知識人であることも自覚しているはずだ。村上春樹がガザ攻撃について発言するのは当たり前の事だろう。

はたして村上春樹は人間として、また知識人として、サッカー選手よりも劣るのだろうか?



−−−−−(以下はガザ攻撃に抗議したサッカー選手の行動を伝える新聞記事)−−−−−

ガザの惨劇を訴えるサッカー選手(朝日新聞2009年2月4日 朝刊スポーツ面)

 サッカースペインリーグセビリアのFWカヌーテが1月のスペイン国王杯でゴールを決めた後にユニフォームをめくり「PALESTINA」と書かれた黒のアンダーシャツを見せた。敬虔なイスラム教徒であるマリ代表のイスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に抗議するメッセージだった。

 ガザでは昨年暮れの攻撃開始から1300人以上の死者が出た。半数近くが一般市民と見られる。イスラエル寄りの米国は積極的に自制を求めずから、国連も機能しなかった。ガザを支配する過激派ハマスの攻撃でイスラエルにも被害は出ているが死傷者はガザが圧倒的に多い。
 スペイン協会は「シャツによる広告・標語の禁止」に違反するとして3000ユーロ(約36万円)の罰金を課した。カヌーテは「処分は受け止めるし、自分はしなければいけないと思った事をしただけだ」と地元紙に語った。

 名古屋のストイコビッチ監督も現役時代には物議を醸した。99年コソボ紛争をめぐり母国セルビア(当時ユーゴスラビア)が北大西洋条約機構NATO)の空爆を受けたのに抗議し「NATO STOP STRIKES」と書いたTシャツをピッチで見せた。母国には親や友人がいた。民族浄化で国際社会から「悪者」のレッテルをはられたセルビアで、無防備な市民が死と隣りあわせで暮らす悲劇を訴えた。

 その頃取材でザグレブにいた私は、空爆の余波による空港閉鎖を経験した。バルカンの民族紛争をスポーツを題材に描こうと思うきっかけになった。スポーツに政治を持ち込むのは反対だ。ただ理不尽な国際政治の力学で家族友人が聞きにさらされるのを我慢できない気持ちは共感できる。(稲垣康介)

サッカー選手の抗議を伝えるニュース[動画]

[動画]パレスチナガザ地区を激励するゴールパフォーマンスをしたカヌーテアブトレイカ選手の行動を伝えるアルジャジーラTVの動画。
 サッカー・スペインリーグセビリアカヌーテ選手は対デポルティボ・ラ・コルーニャ戦でゴールを決めた後ユニフォームをめくりアンダーシャツに書かれたパレスチナという文字をアピール。スペイン語アラビア語などに混じって日本語で「パレスチナ」の文字も。またサッカーアフリカ杯でエジプト代表のモハメド・アブトレイカのゴールもガザ地区へメッセージを記したシャツを見せる。
http://footballingtube.blog93.fc2.com/blog-entry-5419.html

参考:ガザ攻撃に抗議した選手への処分はイエロー1枚のみ(アル・アハラーム紙2008年01月28日)

サッカー、アフリカ杯でガザ地区との連帯をアピールしたエジプト選手、警告処分で済む
2008年01月28日付アル・アハラーム紙(エジプト)HP1面
 (前略)アフリカ・サッカー連盟は、アブー・トレイカ選手が着用していたシャツでガザ地区との連帯をアピールしたことによって受けた警告をもって〔同選手への処分は〕十分とみなした。FIFAの規程では、試合の場で宗教的・政治的・人種的なスローガンを掲げることが禁止されていることは周知の通りである。この決定によってアブー・トレイカ選手はザンビア戦に出場できることになる。
http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20080130_165003.html

参考:グーグルがガザ攻撃への抗議を抑制(日刊ベリタ2008年02月18日)

ガザ連帯を訴えたエジプト人サッカー選手の英雄写真をグーグルが削除?
 先月のサッカーのアフリカ・カップで、エジプト人選手アブー・トレイカは初得点シュートを決めた直後、着ていたシャツを引き上げた。すると、「SYMPATHIZE WITH GAZA( ガザに同情せよ)」と英語とアラビア語で胸に大書した下着が姿を現した。各通信社はこの写真を一斉に世界に流し、彼は一躍アラブ・イスラム世界で時の英雄になった。ところが、写真の伝播を恐れるイスラエルの圧力で世界的なサーチ・エンジンのグーグルがこの写真を検索サイトから削除した、と15日付のアルクドゥス・アルアラビーが報じた。グーグルは削除を否定している。(齊藤力二朗)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200802182332321