zames_makiのブログ

はてなダイアリーより移行

秋葉原通り魔事件でトリアージに殺された人がいる

はてなダイアリーでは2008年5月、トリアージを理解しない女子学生を侮蔑する大学講師のブログをきっかけに複数のはてな市民によりトリアージに関する論争が起きた。その一端はここで読める。
  一方日本では2008年6月秋葉原路上で7人が殺された事件でトリアージが行われたが、そこではトリアージ自体の危うさがしめされた。即ち、必要もないのトリアージを行ったこと、更にトリアージを行う上で判断ミスにより、本来死ななくてもいい人が、救急隊により殺された可能性がある事がTVにより報道された。



<以下は2008年10月5日フジテレビ「サキヨミ」で放送された内容から>
秋葉原事件では事件発生後、周囲に多くの病院がありながら病院搬送まで長い時間がかったケースがある。息子が死んだXさんは息子(Aさん)が病院につくのになぜ時間がかかったのか疑問の声を上げている。記録によればAさんは実際1時間以上かかっている。番組は事件現場を写したビデオ、専門医、Aさんに現場で付き添った人、この事件でのトリアージ状況に関する救急隊の内部報告書などを紹介し、このケースを調査・報道した。
 それによればAさんは負傷し、始め救命隊員により間違って心肺停止と判断され黒タグ(搬送しない)をつけられ、その後赤タグ(急いで搬送)になった。結局病院につくまで1時間以上かかり死亡している。Aさんに付き添った人は負傷直後にはAさんは喋れる状態だった事を述べている。700人の負傷者の出た2005年ロンドンの同時爆弾テロ事件では黒タグは2人だけで、秋葉原の事件では負傷者は17人とずっと少なく、一方受け入れ病院は近辺に30以上と数多くあり、そもそもトリアージの必要はなく、順に搬送すればすむ。であるのにトリアージを行い、かつ最初にタグをつける時に間違いを犯しAさんを死なせた可能性がある


<番組報道内容から>

  • 番組が入手したビデオでは、何人も地面に倒れている人がいる状態で「赤タグいるか?」と救命隊員が大声で探し回っている様子がわかる。
  • 倒れたAさんを写すビデオを見て専門医(愛知医科大学高度救命救急センター教授 野口宏氏らしい)がコメント「CPRの人は後と言っている」=CPRとは心肺蘇生の必要でありAさんは心肺停止(CPA)と判断され、搬送は後回しと判断されている。
  • 番組がAさんにその場で付き添った人を捜しだし、インタビューするとAさんは最初から返事しており救急隊の黒タグ判断は間違いだった。
  • Aさん搬送時の現場写真にはタグの残片がありAさんには搬送時(あるいはその直前まで)黒タグがつけられていたと思われる
  • 黒タグをつける基準は歩けない×呼吸停止×脈が取れない、とされている、しかもそれは大災害の場合で周囲に多くの病院がある場合ほとんどつけられる事はない
  • 事件発生から時間があまりたっていない場合、まず黒タグはつけないのが世界の常識
  • 番組が入手した救急隊内部資料から、この事件では6人が黒タグをつけられ、Aさんは「黒→赤」と記入され、当初黒タグをつけられたが途中で赤タグに変えられたとしている。
  • 資料から赤タグ(最も搬送を急がれる)に分類された人でも、実際にはタグがついていないケースが2つあった
  • 同じ秋葉原事件の被害者であるBさんは救急車に乗ってからも45分出発しなかったと番組インタビューに答えている。
  • 番組は誤ったトリアージで現場が混乱し搬送が遅れたと推測、東京消防庁に質問したが返事はなかった


<伊藤隼也(ジャーナリスト)の番組コメント>

  • トリアージは数100人以上の被害者が出るような大規模災害時に行うもので、17人の被害者のこの事件では本来そうすべきものではないのを間違ってやった
  • 検証が行われているが内部でやっている、外部の専門家を入れて過ちから学ぶべきだ


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(追記・感想)
トリアージについて漠然と抱いていた疑問が指摘されていて非常に驚いた。黒タグとは搬送しないという処置であり、事実上の死亡宣告であることに大いに疑問を抱く。赤タグ(すぐに搬送)と黄タグ(その次に搬送)の区分だけでもいいのではないのか?今回の事件で問題は3つあると思う。

  1. こうした規模・条件の事件にもトリアージというのは必要なのか?
  2. 例えトリアージをするにしても、最も厳粛に考えるべき黒タグの基準が外国に比べ広すぎるのではないか?人の命を救う為ではなく人を殺す(黒タグをつける)ためにトリアージをしているのではないか?
  3. 現在の基準のトリアージでも、今回実際に判断ミス(診断間違え)、手順ミスが起きている。そんないい加減な状態で、死亡宣告というひどい事をしていいのだろうか?

そしてこうした推測は考えすぎだろうか?
秋葉原通り魔事件では7人が死亡したが内6人には黒タグがついている。それは刺されたから死んだのではなく、黒タグをつけられたから死んだのはないのか?
通り魔事件のように、犯人に特定個人への恨みがない曖昧な殺人動機の場合は、殺傷現場の凄惨さに犯人自身が驚き、犯行が鈍ることをよく聞く。今回秋葉原事件で7人もの多くの死者が出たのは実は犯人の凶悪さにより多くの死者が出たのではなく、浅い傷にも関わらずトリアージの乱用と現場の混乱により、病院に搬送するのを最初から拒否されたことにより死者が増えたのではないのか?
今後他のメディアからの取材によりより詳しく事情が明らかにされ、真相の究明と、トリアージに関する実施の改善を望みたい。


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(追加情報)
私の見方が間違っているのかも?と思い少しネットを調べてみましたが、週刊文春で記事が出ていますね。そして消防庁は黒タグと赤タグのつける基準を明らかにしていないという。やはり今回の事件の開かれたきちんとした検証が必要だと思いました。

『わたしが、地域の訓練で見たトリアージシステム(タグをつける基準)は、救急隊員の直感によりなされているものであったのだ。隊員のお偉いさんに、「どのようなトリアージ方法を用いてるのですか?方法論を教えてください」と聞いたのだが、小馬鹿にした態度で − 結局、triage tag systemの具体的方法論は聞けなかった。(中略)
東京消防庁は−肝心のタグ基準が明記されてない。どのような場合で、黒なのか、赤なのかなどの判断基準である。METTAGやSTART・・・などがあるわけだが、公表しない理由というのは何なのだろうか?・・・知らしむべからずは・・・批判されても仕方がない。』

内容を記したブログ(http://www.zassi.net/navigator_issue_list.php?id=71
『現場の救急体制について、メディアではおおむね評価が高かったとされているが、記事によると現場の状況はかなり違っていたようだ。亡くなられた武藤舞さんは、肝臓まで達するほどの深い傷を負いながら、外見上は派手な出血が見られず、意識があったためトリアージにより黄色のタグ(非緊急治療群)が着けられた。現場に遭遇した医師の指示で赤色(最優先治療群)に付け替えられたが、結局残念な結果となってしまったという。(中略)
 現場の統制が取れていなかったことやトリアージという選択が正しかったのか、またトリアージ自体の抱える課題などが浮き彫りになった。テレビ等では知ることのできない、もうひとつの現場の姿が伝えられている記事。』

内容を記したブログ(http://www.tsukuru.co.jp/shukanshi_blog/2008/07/post-101.html
『第二弾の7月31日号は「『秋葉原通り魔』遺族の慟哭『ウチの子はなぜ70分も路上に放置されたのか』」というさらにショッキングな見出しだ。トリアージによって黒タグ(すでに死亡もしくは救命不能)を付けられた藤野和倫さんの母親の話を紹介したものだ。
 秋葉原周辺は「病院銀座」と呼ばれるほど病院が多い地域で、適切な救急活動が行われていれば、もっと助かった人がいたのではないか。記事はそう指摘して、今回の事態を「救急崩壊」と呼んでいる。
 医学的知識が乏しい私には、この記事の妥当性を判断するのは難しいのだが、少なくともこういう検証がなされるべきだということはわかる。同誌の取材に対して東京消防庁は「現在、事後検証を行っている。結果を公表するか未定」と答えたそうだが、同誌によると「今まで事後検証の結果が公表された事はない」という。』

『テレビの映像では、「グーパー、グーパー」するのが見えたそうだ。家族は「それが助かるサインだとは思いませんが、この時点で和倫は生きていた。何故黒タグうを付ける必要があったのでしょうか?」と、犯人に対する憤りと共に、やり切れない思いに苦しみ、消防庁に説明を求めた。消防庁の答えは、「規定通りです。」という冷酷な答えのみで、まるでクレイマーのように扱われたそうだ。』