zames_makiのブログ

はてなダイアリーより移行

鳩山VS麻生の党首討論の軍配分析とテレビの伝え方の状況

新聞はこの討論を議論が噛み合っていない、政策の説明がない、政策論争が深まらないなどと書く(下段参考を参照)、しかしそのようにメディアが突き放して書く事は間違いだという事。今のままでは何回党首討論を重ねても逃避が繰り返されるという事。なぜ議論が深まらなかったかについて分析する。以下はNHKが放送した50分間の党首討論および5/27〜5/28にかけてのこの討論を報じたほぼ全てのテレビ番組を見た上での記事だ。
 2009年5月27日行なわれた鳩山由起夫VS麻生太郎党首討論はどっちが勝ったのだろうか?テレビははひつこく軍配は?との見出しをつけるので自分の評価を書く。同時に党首討論を伝えたテレビの報道番組の分析をする。


 この党首討論を5/27から5/28にかけて以下のテレビ番組で報道している。これらの短評は最下段を参照されたい。5/27夕方のニュース番組:スーパーJチャンネル(EX)、NEWS FINE(TX)、スーパーニュース(CX)、NNN News リアルタイム(NTV)、総力報道!THE NEWS(TBS)、NHKニュース7(NHK)。5/27夜のニュース解説番組:ニュースウオッチ9(NHK)、報道ステーション(EX)、NEWS ZERO(NTV)、NEWS JAPAN(CX)、時論公論「麻生対鳩山 党首対決の勝敗」(NHK)。5/27朝の報道ワイドショー:ズームイン!!SUPER(NTV)、みのもんたの朝ズバッ!(TBS)、スーパーモーニング(EX)、とくダネ!(CX)

軍配は7:3で鳩山由起夫氏の勝利

理由:
(1)内容面から:鳩山氏は自分の政治の理念は何で、それがなぜ必要なのか、彼の提唱する「友愛」の政治の具体例、秘書逮捕事件について説明責任をどう果たすかの説明、企業献金の禁止の方針などについて自分の意見を述べた。しかし麻生氏はそれに対して民主党の非難をするだけにとどまり麻生氏の考え方や方針はほとんど述べなかった。麻生氏はまるで批判だけをする昔の野党のようだった。麻生氏は鳩山氏を貶すことに熱心で国民に対して自分の考え方を説明できておらず、国家政策や政権選択の如何を問う討論としてはまったくの敗北だと思う。


(2)態度や言葉など雰囲気から:テレビを通して見た双方の印象からは鳩山氏がやや優勢に感じた。鳩山氏は滑らかに、時に強く発言し自信と行動力があると感じだ。対して麻生氏は鳩山氏の批判にまったくひるんだ様子はなく、逆に民主党を非難する時の口調はかなり強く、力強さを印象づけた。しかし言葉はややつかえ気味で(それが彼の話のスタイルと思えるが)、少し自信に欠けるように見える。加えて麻生氏は時々皮肉をこめて笑っているように見え、相手を見下して真面目に内容で議論を交わそうという気がないようにも見えた。これは麻生氏の口が曲がっておりテレビが写した側から見ると、あごの部分にしわがよっているためかもしれない。もしかしたら麻生氏は本当は笑っていないのかもしれないがそのように見えるという事だ。

採点するなら麻生氏も鳩山氏も80点

 討論を評価する上で両者を100点満点で採点する形式もある。もしそうするなら両者とも80点だと思う。両者とも自分の示すべき論点を国民に精一杯示そうと頑張ったし、その範疇では双方かなりうまくやっただろう。即ち鳩山氏は自分の政策理念と小沢問題が終わったことを説明した、麻生氏は小沢問題を追及する事で自民党にも勢いがある事を示そうとした。以下の(A)および(B)の2点を考えれば討論で両者とも同じように頑張ったと思う。しかしその結果としての勝敗は鳩山氏に軍配が上がったというべきだろう。

評価の説明

 軍配の結果は上記で書いた2要素から評価して総合したものだ。2要素があるのは討論を(A)国の方針をトップが具体的に論じる場、内容で判断する場と考えるのか、(B)アメリカ大統領選のテレビ討論のような、2者から勝者1人を決めるためのディベート(議論内容だけでなく言葉使いや表情などによる印象操作による決闘と言うべきもの)と考えるのか、で評価は異なるから。


 (1)(A)の内容面では両者の議論はほとんど応酬がなく噛み合っていない事が多かった(これを指摘するテレビキャスターは多くいた)。その主な原因は麻生氏にあるだろう。議論内容をみれば多くは鳩山氏の主張や質問に対し麻生氏が自分の見解は述べずに、鳩山氏の示した論点とずれた自分の意見をただ述べる事、あるいは西松建設問題をひつこく突く事を行っている。この意図的な操作のため議論が噛み合わないのだ。
 この事は鳩山氏も直接述べており討論中では「全然答えていないじゃないですか」と糾弾しているし、討論後の記者への感想でも「麻生氏がまったく真面目に答えていない」と述べている。
 この両者の討論をネットの掲示板やブログのコメント欄でやれば、相手に答えていない麻生氏の敗北は9:1の差で決定的だろう。しかし国会ではこうした噛み合わない討論は常態化しているし、今までメディアはそれを当たり前の事として見過ごしてきた。今回の討論を伝える番組でも麻生氏が答えない事をはっきり問題視するキャスターはいなかった。噛み合わない最大の原因はここにある。


 (2)一方(B)の見方については、実はテレビの報道番組の多くが「軍配はどちらに?」と見出しをつけることで(B)の見方で紹介をしてしまっている。中でもフジテレビの「スーパーニュース」では1960年のケネディ-ニクソンの討論映像まで出して、議論内容より態度や雰囲気が勝敗を決すると強調していた。(しかしフジテレビはどっちが優勢だったかは述べていない)。普段格別政治に関心はなく、背景知識のないまま討論をいきなり聞けば、麻生氏の低い声や攻撃的態度は鳩山氏を上回り優勢に見えても不思議はない。TBSの可愛い小林麻耶キャスターは麻生氏が緊張していると見たが、フジテレビの木村太郎キャスターは麻生氏の態度は余裕がある落ち着いたものとしていた。麻生氏の態度は評価者により肯定・否定両方がありえよう。
 同時に朝日新聞山口二郎教授は麻生氏の討論能力を高く評価している。麻生氏は鳩山氏の問いかけには内容では真面目に答えないが、臨機応変に対応し必ず逆に攻撃的に問い返している。それはかなりの能力というべきだ。視聴者が背景知識に欠けて討論内容そのものを判断できなければ、こうした「言葉の多さ」「言葉の調子」「論者の表情や態度」だけで判断することになり、どっちもどっちだ、あるいは麻生氏が優勢だと評価してもおかしくはない


 (3)メディアについて言えるのはテレビ東京を除いてはテレビ局自身は勝敗について自分では判断を下さなかった事だ。それはメディアとして怠慢であろう。アメリカの大統領選での討論では、要素に分け細かく評価をして討論の勝敗をテレビが報じている。日本のテレビもある程度それをすべきだ。
 日本のテレビが自分では討論の評価を避ける理由は、NHK日本テレビ、フジテレビ、テレビ東京が政府支持・自民党よりであるのに対し、TBSとテレビ朝日が自然なジャーナリスト精神から野党より・民主党よりであることに大きな原因があるだろう。
 だがそれ以前にそもそも評価する能力がないのが一つの原因と感じられる。今回唯一討論の評価をしたテレビ東京では、現場記者のコメントで勝敗は五分五分だとしていた。しかし同じ番組内で続いて喋ったスタジオの解説委員は麻生氏が討論に真面目に対処していない点をいくつも指摘し、麻生氏の劣勢だと暗に述べていた。このように記者であっても不勉強からかきちんと評価できない人もいる。
 結局今問題になっているメディアのおかしな報道の基本的原因として、メディアが本来持っていなければならぬ起きてている事件・情勢に関する分析力・判断力が足りない事がその背景にある事が推測される。

討論およびメディアの反応で興味深いこと

  いくつものテレビの報道番組を見て注目すべき事を書いておく

(1)西松建設問題は終わった:今回麻生氏は国民が一番知りたがっているのは西松建設の問題(小沢一郎民主党前代表の政治と金の問題)だとして鳩山氏への攻撃の柱にした。しかしテレビの報道番組でこれを支持し「そうだそうだ、それを説明しろ!」としたのは、みのもんたただ1人だった。
 5/27の多くの番組では麻生氏の発言VTRとして西松問題追求を伝えたが、番組ナレーションや番組にでてくる人でそれを知りたいとする発言はまったくなかったと思われる。番組キャスターのコメント、コメンテーターの意見、街の声として、国民はそれを知りたがっていると伝えた番組はなかった。更にはっきりしているのは5/28の午前中の情報ワイドショーでは日本テレビズームイン!!SUPER」での辛抱治郎、フジテレビ「とくダネ!」の小倉智昭は、国民が一番知りたがっているのは景気や生活のことだ、とはっきり言っている事だ。又テレ朝の「スーパーモーニング」では、もう西松問題は国民は関心ないよとコメントされていた。更にみのもんたの番組「朝ズバッ!」の中でも、みのもんたに賛同するコメンテーターはいなかった。


(2)麻生氏は新自由主義=小泉構造改革を否定した:これは朝日新聞山口二郎教授が指摘したことだが、討論の中で麻生氏は私の理念は「小さいけれど暖かい政府」と答え、新自由主義すなわち小泉構造改革を否定した。麻生氏はその後記者に対しても「鳩山氏の掲げる友愛はいいことだ」と答えており、金儲けのうまい奴が勝手に豊になればいいという新自由主義自民党からも民主党からも否定された。


(3)なぜ政策論争が深まらないのか?:全ての報道で共通しているのは、今回は政策論争が深まらなかった、だから次回からテーマを絞りもっと頻繁に党首討論を行うべきだ、という論調だろう。しかしそうしてもメディアが欲するような具体的な深い論争にはならないと私は思う。
 メディアはなぜ「政策論争が深まらなかった」のかの正しい認識に欠けている。それは自分の痛い部分、自分の政策の正当性や論点の正しさを説明できない時は議論を避ける、という日本の政治家が続けてきた議論スタイルの為だ。
 実際にはこれは政治家特有の現象ではなく、ネット上でもよく見られるもので議論における一般的性質だ。自分がその論点では勝てない(自分の主張の正しさを説明できない)時はそれは避け、他の論点に誘導する、あるいは沈黙し知らん振りする事が討論では頻繁におこる
 麻生氏が今回ほとんど全ての鳩山氏の問いかけに答えないのはそれが動機であろう。これを「議論はすれ違い」とか「議論が深まらない」と言うべきではない。それは論者による意図的なものだからだ。もし深い政策論争を望むのであれば、彼ら政治家(特に麻生氏に)にそれを語らなければいけないという圧力をかけるべきだ。メディアはそう明言し議論を避ける政治家を批判すべきだ。それがメディアに求められる議題設定能力(ゲートキーパー能力)であろう。メディアは自分のすべき役割を果たすべきだ。


(4)テレビ番組中で示された軍配・採点(政治家の記者へのコメントを除く)

  • 軍配は五部五部だ(テレビ東京「NEWS FINE」での現場記者)
  • 軍配や内容は評価不能だ(TBS「総力報道!THE NEWS」の後藤キャスター)
  • 軍配は鳩山氏がやや優勢(街の声、いくつかの番組では街の声として軍配を伝えているが、全体として数的には鳩山氏がやや優勢という状況だ。少なくとも麻生氏がよいという強い街の声はなかった)
  • 泥試合だった(TBS「朝ズバッ!」の、みのもんたキャスター)
  • 採点:麻生氏は55点(自民党 平沢勝栄氏)、麻生氏は60点(自民党 後藤田正純氏)
  • 採点:鳩山氏は90点(民主党 川内博史氏)、鳩山氏は80点(民主党 長妻昭氏)
  • 採点:麻生氏は25点、鳩山氏は20点(毎日新聞 与良正男論説委員
  • 採点:麻生氏は20点、鳩山氏は30点(ジャーナリスト 嶌信彦氏)・・・TBS「朝ズバ」で
  • 採点:麻生氏は49点、鳩山氏は55点(政治ジャーナリスト 伊藤惇夫氏)
  • 採点:麻生氏は50点、鳩山氏は60点(政治ジャーナリスト 有馬晴海氏)
  • 採点:麻生氏は50点、鳩山氏は70点(言語学者 東照二氏)言葉使いの分析から
  • 採点:麻生氏は50点、鳩山氏は65点(ジャーナリスト 鳥越俊太郎)印象から・・・EX「スーパーモーニング」で

テレビメディアの報道の様子・どのように伝えたか

 この党首討論を5/27から5/28にかけて以下のテレビ番組で報道した。
5/27夕方のニュース番組:スーパーJチャンネル(EX)、NEWS FINE(TX)、スーパーニュース(CX)、NNN News リアルタイム(NTV)、総力報道!THE NEWS(TBS)、NHKニュース7(NHK

5/27夜のニュース解説番組:ニュースウオッチ9(NHK)、報道ステーション(EX)、NEWS ZERO(NTV)、NEWS JAPAN(CX)、時論公論「麻生対鳩山 党首対決の勝敗」(NHK

5/27朝の報道ワイドショー:ズームイン!!SUPER(NTV)、みのもんたの朝ズバッ!(TBS)、スーパーモーニング(EX)、とくダネ!(CX)


(1)全体評:NHKもおかしな総括をしなかった(政権交代を恐れて?)
 全般に党首討論の様子を抜粋VTRで、討論形式で見せる構成がほぼ全ての番組で行われ、かつその番組内容のほとんどを占めていた。ナレーション等で勝手に総括する部分はとても少なかった。その結果実際の討論の様子に比較的忠実な番組が多かったと思う。これは通常の国会討論ではまったく見られない現象だ。通常は討論のほんの一部の発言をワンフレーズ的に抜き出し、後はナレーションで総括的に紹介している。今回そうならなかったのは、テレビ局のおかしな見方(ある意味では視聴者操作)が混ざってこない点ではよいことだ。
 特にNHKが7時のニュースと9時のニュース両方で、普段よく使うおかしなコメントをする解説員をまったく登場させなかったのは大変よかった。NHKに登場する解説員はNHK社員であり、しばしば事実に基づいているとは思えない、与党政府よりの見方でコメントするからだ。NHKは3ヶ月後には政権交代が予想される為、民主党にも色目を使っているのだろうか。


(2)優れた報道番組:結果としてテレ朝の夕方の番組がよい・NHKの社説は最低
 テレビ局自身として討論内容を分析し評価したのは、テレ朝の「スーパーJチャンネル」、TBSの「総力報道!THE NEWS」、テレビ東京の「NEWS FINE」、NHK時論公論「麻生対鳩山 党首対決の勝敗」である。(常に詳しくコメントをつける報道ワイドショーを除く)

 この中で「スーパーJチャンネル」が短いが一番真面目に分析していた。鳩山氏がいくつかの論点を提示し、今後の論争点として成長させる端緒としたとまとめた。そして主に麻生氏が議論から逃げたためそれが深まらなかったと評価した。

 「総力報道!THE NEWS」では、後藤謙次キャスターが議論が不十分で日本の将来を両者のどちらに任すかこれでは判断できないと断じた。番組内で2回目に扱ったコーナーで政治家各人の討論へのコメントを紹介した後でも同じようにまとめた。しかし後藤キャスターはその責任が誰にあるかは触れずもっと党首討論を重ねるべきだとのみコメントし、これは真の原因を突いていないと思う。またこの日国会に取材に行った可愛い小林麻耶キャスターは、野次が本当にうるさくて討論の声が聞き取れないとコメントしていた。(これは他のコメンテーターも述べている)

 NHKの社説にあたる時論公論http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/)はこの日23時50分から10分間、影山日出夫解説委員が党首討論を解説をした。そのタイトルは「麻生対鳩山 党首対決の勝敗」であったが影山氏は勝敗にはまったくふれず、議論内容を紹介し具体的政策の議論にならなかったと指摘し、その原因は両党首の自分の党の統率力不足にあると断じだ。しかしこの原因分析に納得する人はいないのではないだろうか。NHK影山日出夫解説委員がやったのは、要は鳩山氏が小沢一郎の傀儡政権であり、鳩山氏が実権を握っていないという自民党の勝手な批判を代弁しただけに見える。それに見かけ上の公平さを与えるため麻生氏も統率力がない事にして説明したのだろう。こんな解説を堂々と流すNHKはまったくおかしい。


(3)朝の情報ワイドショーでの扱いは小さい
 朝の情報ワイドショーは2005年の「小泉劇場」では活躍したが、最近はおとなしい。今回の討論の扱いも普通だった。日本テレビもフジテレビも通常のコーナーで扱い、討論内容自体をまげて紹介したりはしていない。TBSは「朝ズバ!」で4人の国会議員を呼んで討論をさせるやや大きめの扱いだったが、みのもんたの「泥試合だ」という感想を除けば全体の結論は他の番組と大きな差はない。しかしこれらの番組それぞれその内容は、テレビ局の立場がわかりやすい形式で色濃く現れている点では「小泉劇場」的なものであり、視聴者にある印象を強く与えるものになっている点では「小泉劇場」時代から変わっていないと言うべきだろう。


党首討論を報じたテレビ各局各番組の紹介・短評

(1)5/27夕方のニュース番組:

  • スーパーJチャンネル(EX):討論終了後1時間で討論VTRで内容紹介し、加えて短いがテレビ朝日の解説委員が両者の主張内容をまとめ、鳩山氏の議題設定を高く評価し、麻生氏のそこからの逃避を指摘した。コメンテーターの大谷昭宏は鳩山氏はなかなかよかった、麻生氏は鳩山氏の論を受け止めるのに精一杯でそれ以上できなかったとした。
  • NEWS FINE(TX):討論VTRで内容紹介し、代表戦では岡田氏を支持した民主党蓮舫氏、自民党改革派柴山昌彦氏による鳩山優勢のコメントをとり、各議員の評価を流した。加えて現場記者が五分五分だったとコメント。しかしスタジオのテレビ東京の解説委員は麻生氏の討論逃避をにおわせる解説を加えた。
  • スーパーニュース(CX):討論VTRで内容紹介し、木村太郎キャスターが議論内容だけでなく表情や態度でも勝敗は決まると解説。番組内2回目のコーナーで街の声を紹介、かつて麻生氏の支持者が多かった街秋葉原でも関心を持つ人はいない、テレビ中継を見た人の投票で鳩山氏に軍配を上げる人が3:1程度で多いと伝える。
  • NNN News リアルタイム(NTV):討論VTRで内容紹介したのみ、かなり簡単な扱い。日本テレビは政治報道についてはこうした簡単化の傾向(扱わないという方針)が見られるように思う。
  • 総力報道!THE NEWS(TBS):討論VTRで内容紹介し、後藤キャスターが内容が不十分で政権選択の材料にならないと強くコメント。番組内2回目のコーナーでは討論VTRにナレーションをかぶせつつ紹介、結局討論が深まらない様子を検証、後藤の見解を更に判るよう示した。
  • NHKニュース7(NHK):8分かけて討論VTRで内容紹介し、議員各人のコメントを伝える。NHKは時としてこの枠内でも解説員を出し、討論内容をNHK的視点(すなわち政府より視点)で総括するがそれをしなかった。異例に思える。


(2)5/27夜のニュース解説番組:

  • ニュースウオッチ9(NHK):7時のニュースとほぼ同じ時間で同じ内容。NHKは9時のニュースでは解説と称しNHK的視点(政府側の視点)を解説員に喋らせる事が更に多いのにそれもないのは珍しい。
  • 報道ステーション(EX):意図的に討論VTRで内容紹介する事のみにとどめ、視聴者自身の判断を求めていた。一色清コメンテーターは麻生氏が議論をはぐらかした、全体に鳩山氏が優勢と感じたとした。
  • NEWS ZERO(NTV):討論VTRで内容紹介し、議員各人のコメントを伝えた。最後に村尾信尚キャスターが「我々が求めているのは社会保障と安全保障の議論だ」として麻生氏が討論最初にあげた論点をなぞって強調し、日本テレビ自民党支持をこっそりと反映した。
  • NEWS JAPAN(CX):討論VTRで内容紹介し、議員各人のコメントを伝えたのみでいつもと変わらないつまらない番組内容だった。この番組では松本方哉キャスターが自民党支持のコメントを加える事が多いのだが、この日は北朝鮮批判に時間を割いたため割愛したのだろうか?
  • 時論公論「麻生対鳩山 党首対決の勝敗」(NHK):全て解説委員の言葉だけで説明した。互いに相手の弱点を突くことにこだわり民主党の政策が示されなかった、政策議論が深まらなかったとした。その原因は両者がそれぞれの党で統率力がなく指導者の重みがないからだ、論者自身の自説が出せないからだという、首を傾げざるを得ないおかしな説明をした。これは内容的には鳩山氏が小沢一郎氏の傀儡だという自民党の代弁でしかない。NHKは誰も見ていていないからと言って、夜中にこっそり自民党の宣伝をすべきではない


(3)5/27朝の報道ワイドショー:

  • ズームイン!!SUPER(NTV):ニュース記事として討論は「かみ合わない」と報じる。解説員キャスターである辛抱治郎氏(関西ローカル放送では有名な自民党支持者)の解説枠では討論VTRで内容紹介し、貶しあいで具体的な政策議論内容がないと討論を総括した。そして何より補正予算案の内容を議論すべきだとした。
  • みのもんたの朝ズバッ!(TBS):みのもんたが冒頭で「討論は泥試合だった」と評し、また政治と金の問題だったと嘆いた。VTR中の小沢一郎氏に対しお前が悪いのだとくさしていた。内容のない事に嶌信彦などのコメンテータも同調した。討論の紹介はVTRは少しだけで論点毎にまとめたボードで行った(この番組が毎日行っている形式)、その結果議論内容が深まらなかったという結論だった。しかし番組内2回目のコーナーでは自民党平沢勝栄氏、後藤田正純氏、民主党川内博史氏、長妻昭氏による討論が行われ、全員が具体的政策を論じた鳩山氏を高く評価し逃げた麻生氏を批判した。更に加わったコメンテーター与良正男氏などが多く発言し、具体的政策議論をしろ、テーマを決めてもっと何回も討論を重ねるべきだという論調で統一されていた。
  • スーパーモーニング(EX):討論VTRで簡単に討論の紹介をし、政治ジャーナリスト伊藤惇夫有馬晴海言語学者東照二氏などによる評価を示した。言葉の分析で麻生氏は攻撃的、鳩山氏は呼びかけ形式で鳩山氏に分があるとした。更に番組コメンテーターも含め鳩山氏に分があるとした。しかし内容が深まらず次回以降テーマを決めてもっと度々開くべきとの結論的雰囲気となった。
  • とくダネ!(CX):討論VTRで簡単に討論の紹介をし、西松問題より景気や年金・雇用の問題を議論すべきだと厳しく批評した。番組は主婦に討論を見せ、彼女達の実感で景気や生活の問題を議論して欲しいとした。又5/27夜実施したネットでの結果(524人)から3時では見られない、皆は景気対策や年金・雇用を議論して欲しいとすべきだ、とアンケート結果から結論づけた。非常に独断的な言い方であった。

(更にこの記事の続編は「鳩山VS麻生の党首討論をテレビはどう伝えたのか(続)2009-06-01」にあります)

感想

このブログを書いた者の立場はリベラリズム・平和主義者で無党派層だが、民主党よりと言ってよい。しかし上記の記事内容では議論を深めるために何が必要か、メディア分析を優先したので私独自の見方は控え目になっている。私の感想は、もし深い政策論争を望むのであれば、政治家(特に自民党の人に)に真面目に議論をするよう圧力をかけるべきだ。メディアはそう明言し議論を避ける政治家を批判すべきだという事です。

<参考:この討論を報じた新聞記事の例(批判つきで示す)>

<この討論を報じた新聞記事の例(批判つきで示す)>

党首討論、「揚げ足取りばかり」「西松」巡り会場騒然(日経新聞 2009年5月27日)
次期衆院選が近づく中、麻生太郎首相と民主党鳩山由紀夫代表が舌戦を繰り広げた27日の党首討論は相手の批判や揚げ足取りが目立った*1。具体的な政策論争にはならず*2、両党の議員からは「議論がかみ合わず残念」*3「具体論がない」*4といった声が漏れた。午後3時、論戦の場となった参院第一委員会室。鳩山代表が「有意義な意見交換を」と切り出すと、麻生首相は「どちらが内閣総理大臣にふさわしいか」と応酬。双方とも選挙を意識した対決姿勢を最初から鮮明に打ち出したが、深い政策論争には発展しなかった*5。(後略)

<この討論を報じた記事の見出し>

麻生首相と民主鳩山代表による初の党首討論 議論はかみ合わないまま終了(FNN)
西松献金泥仕合 自・民が党首討論しんぶん赤旗
政策論争深まらず=「西松」足かせ、非難合戦に−党首討論時事通信
政策論争なき党首討論衆院選の争点浮き彫りにならず (朝日新聞
政策論争なき党首討論麻生首相「国民の関心は西松問題」・鳩山氏「現政権は官僚目線」(ロイター)

<テレビで露出度の多い評価>
テレビ報道番組では議員による党首討論の評価コメントを伝えているが、使用されたもので圧倒的に多かったのは以下の2人だった。

自民党鳩山邦夫氏(総務大臣)=麻生氏の圧勝だね、鳩山氏は15点だ
民主党渡部恒三氏(長老)=鳩山氏の方が国民を真剣に思う気持ちが出ていた、6:4で鳩山氏の勝ちかな。

*1:麻生氏は西松問題で鳩山氏の揚げ足を取ろうとしたのはその通りだが鳩山氏はしていない

*2:鳩山氏は官僚支配を批判、補正予算の金額をあげて批判した。一方麻生氏からはそれへの返答はあったが自分から説明する発言はなかった

*3:議論のかみ合わない責任は回答を避けた麻生氏にあるのは本ブログ本文で書いた通り

*4:詳細な議論は予算委員会などで行うべきものだろう

*5:発展しなかった責任はメディアにもあるのは本ブログ本文に書いたとおり